時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

「・・・いかんな、少しぼうっとしすぎた。じゃあ俺はもう行く、済まなかったな」
「いえ・・・」
ピオニーはそこまで言うとふと首を振ってから手を振り戻ると言い、その場を後にする。ジェイドはその姿を見届けると一人になった場で、眼鏡を押さえる。
「・・・明日私がただマルクトから出るなら、もうそれで私は全てから解放されることになる。ただそうすることは私にとって許される事ではない、生活に困窮はしてもそれは本当に困窮する事ではない。私が困窮するのは贖罪出来ないことに対して、それ以外にないでしょう・・・」
そして自身の気持ちを独白するジェイドの声には陰りがあった、何もせずマルクトから出た場合を想像して。
「・・・覚悟、しますか。例え何と言われようとキムラスカに行き、ルークに付き従うことを。あのようにわざわざ状況をお膳立てしてくれると陛下・・・いえ、ルークも含めたマルクトの人間も協力すると言ってくれたのです。お節介と思いはしても今の私にはそれを拒否する理由はない。そしてそれを嫌だからと理由もなくただ拒否をするなど、それこそ今の私には出来ることでもありません・・・!」
だからこそジェイドは意志を固めて手をどけ、前を強く向いた・・・ピオニー達の心遣いを受け取り、これからの苦難の道を生きていくと決めて。












・・・そして翌日、軍服を脱いで普通の服装になったジェイドは国外追放の為にグランコクマより外に出た。しかしすぐにジェイドはまた別の服に着替え、グランコクマへと舞い戻った。最初こそは一応若干の警戒もしながら。ただマルクトの兵士はジェイドを見て一目散に捕らえに来るということはなく、王宮にまで行っても誰にも何も咎められるような事をいわれることもなかった。

そんな状態のままジェイドがルークがいると聞いていた部屋に行き扉を開けてみれば・・・そこにはルークだけでなくピオニーにフリングスの姿があった。

そこで驚きつつもジェイドは部屋の中に入り、ピオニー達から今後の事についての話を受けた。それは要約すればあくまでジェイドがここにいれるのはルークがキムラスカに帰るまで、それまでの間は『ジェイド=バルフォア』という名で通すこと、それで立ち位置としてはルークの専属家庭教師として雇った物として給与も出すといった物だった。

・・・その至れり尽くせりな条件に最初はとんでもないとジェイドは思っていた。しかしこれはルークが望んだ事でもありジェイドをグランコクマに置くための円滑で必要な処置と告げられ、ジェイドはそれを受け入れる以外には出来なかった。自身はもう偉そうな事は言える立場ではないからと、果報な処置を受け入れる以外・・・









・・・それでグランコクマにいる間ルークのレベルとやる気に見合っただけの勉強を存分につけさせたジェイドは、年が明けた後にバチカルに戻るルークと共にグランコクマを去った。

そしてバチカルに戻ったルークにファブレにジェイドは紹介された訳だが、相手が相手なだけに当然公爵はいい顔をしなかった。名前が違うとは言え明らかにその姿は『ジェイド=カーティス』以外の何者でもなかったために。

しかしそんな風になるだろう事を予見していたピオニーから渡された手紙をルークが公爵に手渡したことにより、話は変わった。その中身は「こちらではもう『ジェイド=バルフォア』には一切ノータッチでいるつもりでいる、もし不穏な動きをしたと取ればそちらで自由に始末をして構わん」と。

このジェイドを自由に始末出来ると記された手紙に公爵は驚きつつも、ルークから熱烈な頼み込みを受けると共にジェイドから真摯に頭を下げられた事により熱意に押されて試しの期間を設けた上でだが、ファブレ邸で雇うと決定させた。

・・・公爵からすれば様々な思惑があって試しの期間という形にしたのだろうが、一度食らいつけばジェイドが諦めるはずもなく屋敷での仕事に必死に従事していった。怪しまれるような行動は取らないよう、ひたすらに真剣に・・・そしてその結果ジェイドは公爵に最終的に認めさせ勝ち取ったのだ、かなり異例な形ではあるがファブレ邸で働きルークを支えるという役目を。



・・・尚これは余談だが、ガイの時に何故ジェイドが出なかったのかと言えば事態がこんがらがるのが簡単に予想出来たからだ。もうマルクトの軍人ではないとジェイドの事を言えば、なら俺もと言葉だけは大層でいて実質中身が伴ってない発言でルークに絡もうとすることが。

だからジェイドの事はガイには知らせず終わらせたのだ、面倒を避けるために・・・










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