時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

「彼からすれば自分はルーク殿に必要とされてこそ、という固定観念があったのでしょう・・・しかしかつての旅を終えたルーク殿にとって、最早ガイ=セシルの存在はそうではなくなっていた。それは彼には我慢ならない事だったのでしょうが、思い違いを引き起こし暴走をするような者をわざわざ必要とする者などそれこそいるはずがありません・・・」
「あぁ・・・もし本当にルークがガイを必要とするような事態があったとしたならそれはルークが余程追い詰められた時か、もしくはガイが真の意味でルークの事を考えられて公私を捨ててまでも付き合うと決めた時だけだっただろうな・・・とは言えあいつにはそれが出来なかった、結果としてルークとマルクトのどちらを取ろうとしてどちらも取れんといった状態に自身でしてしまった事でな。これはもう自業自得と言う以外ない」
それで更にガイの事を厳しく言う二人はそっと目を閉じる、あまりの愚かさに呆れる形で。






・・・ガイは自身がどれだけ恵まれているのか、それを理解することはけしてなかった。と言うよりは自身が恵まれているということを思わず、むしろそれ以上の事を常に求めすぎてしまっていた。

確かに一族を自分を除き全て殺されてしまった、となれば普通は不幸としか言えないだろう。だが例え誰かが生き残るように手を打ったとて、そのような目にあって尚生き延びる事が出来たのだ・・・これは戦場においては運がよかったと言わざるを得ない、何も出来ない子供が五体満足で命があることなどそうそうあることではないのだから。

しかしそれで尚ファブレへの復讐を求めてしまったのはまだ気持ちとしては理解が出来るにせよ、それでルークとマルクトへの気持ちを天秤にかけたことはいただけないことであった。

もしピオニーの質問にどちらか片方が大事とはっきり言えたなら、まだピオニーも快い気持ちになれただろう。例えルークを選び茨の道を選んだとしても揺るぎない友情に忠誠心を持ったのだから。しかし復讐もルークもマルクトもと全てを欲し、言葉を選ぼうとしたことはピオニーやフリングスにとって憤りを感じざるを得なかった。それら全てを求めるというのは二人やマルクトにとってだけでなく、ルークにとっても侮辱であると言えるくらいに都合のいいことなだけに。だからこそルークもそれを感じ、ガイを切り捨てたのである。

・・・だがガイにそれを言ったとて到底理解をするとは思えない、ましてやルークにはもうガイは必要ないなどとは。そしてそう言ったとしたなら嘘だと言って、けして受け入れるようなことはないだろうとも。



・・・故にガイは牢屋に入れた後、有無を言わさずすぐに処刑された。長く生かしておく理由もなく、改心の余地を与える理由も見当たらなかった為・・・









「・・・いかんな、あまり気分のよくない話をし過ぎた。アスラン、お前は今からバチカルに向かう準備を整えてこい。これで話は終わりだ」
「・・・はっ、失礼します」
・・・ルークを除いた者達の事、それらにはいい思い出などない。ピオニーは空気を払拭するかのように頭を降ってから命令を下し、フリングスも素直に従い敬礼を返して謁見の間を後にする・・・
「・・・二年、か。遅いようで早かったな、この時間は。だが人が変わり成長するには十分な長さだ。アスランからの報告を待とう、どのようにルークが成長したのかをな」
一人残ったピオニーは天を仰ぎ見ながら呟く、ルークの事を期待するといった言葉を・・・








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