時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

「・・・まぁ神託の盾の処置についてはこのくらいでいいだろう。ただ神託の盾として扱うのもはばかられる・・・アッシュの時がまた面倒だったな」
「えぇ・・・彼の事情がまた事を一層面倒にしましたからね・・・」
それで次の話題はアッシュだが、ピオニーの嫌悪感に満ちた声にまたフリングスも面倒そうに声を上げる。



・・・ピオニーが神託の盾としてアッシュを認めたくない、と言うのには理由は二つある。一つは自身が言っていたように神託の盾として忠誠を持って動いてきた訳ではない、二つ目は個人的に嫌いだからだ。

確かにアッシュは神託の盾としてローレライ教団に忠誠を誓った訳ではない、例え入った経緯が経緯でもだ。だがだからと言ってやったことが同情で許されるかと言えばそれも違う・・・神託の盾としてやったことは消えないからだ。

しかしアッシュにはそう言った意識がないだけでなく、ルークに自身がやってないことの不満までも全てを押し付けようとさえした・・・これは神託の盾としてだけでなく、人として最悪な事と言えた。故にピオニーは一応捕らわれて処断をされることを素直に受け止めた神託の盾とアッシュを区別し、同時にその存在を受け付けない物とした。

・・・しかし何故アッシュがまた面倒だったのか、それは・・・



「ジェイドから大爆発の事を聞いてなかったらもしやの場合も有り得たかもしれん、そう今考えると頭が痛くなるな・・・」
「えぇ・・・万が一に越したことはありませんでしたが、だからと言って処断をする時間を先伸ばしにしたことがあれほど面倒になるとは思っていませんでしたからね・・・主にアッシュの世話で・・・」
大爆発、そう口にして本当に頭を痛そうに押さえるピオニーにフリングスもまた頭を押さえる。









・・・そう、アッシュの事で起こった面倒とは大爆発と言う現象の為に簡単に処断が出来なかった事だ。

罰を受ける前の最後の任務としてナタリアをキムラスカに送ることになったジェイドは出発する前、ピオニーに言った。『もしアッシュを処分するなら大爆発の事を念頭においてほしい。詳しくはディストに聞いてもらえばわかります』、と。

それでディストに話を聞いたピオニーはどうしたものかと考えた、その大爆発とは要約すれば相当に低い可能性ではあるが被験者が死んだ場合レプリカのその体を乗っ取って生き残る現象と聞き。
それらを聞いてまずピオニーはアッシュの処断のみを一時先伸ばしにした、もしもの可能性を実現させない為に。そして考えた、どうルークを乗っ取らせないようにアッシュを処断するかを・・・

その結果、ピオニーはルークがキムラスカに帰った後にアッシュを処分すると決めた。いくら大爆発でも距離が遠すぎれば被験者はレプリカの体を乗っ取れない、そうディストから聞いたために。
しかしそうするくらいなら別の遠い場所に連れていきアッシュを処断すれば良かったのではと思われるが、そもそもその存在が爆弾のような物なのだ。本物のルークであり、鮮血のアッシュであり、キムラスカの王族の外見・・・これだけの特徴を持つアッシュの事をもしグランコクマから連れ出しでもして処断を下したなどと言う事実がバレたら、また面倒な事になりかねない。

それにそもそもアッシュの存在も当時からごく限られた一部の者以外にグランコクマで知る者がいなかったのだから、秘密を守るためにも余計に外に出すわけにはいかなかったのだ。慎重に処断するためにも。

・・・故に下した結論としてはルークが帰るまでは牢に入れて帰ってから処断するという風になったのだが、そうなるまでには当然月日が結構かかりアッシュも牢で黙ってなどいるはずもなかった。情報の秘匿の為あまり人が来ないような場に入れこそして秘密を守れる一部の兵士に面倒を見させていたのだが、牢に入れられ精神が弱るかと思いきや毎日常にギャーギャーと文句ばかりを言い黙る様子も弱る様子も見せない・・・これには逆に兵士が精神の方をやられそうになったくらいだ(まぁ毎度毎度懲りもせず似たような事を一日中ずっと飽きもせずずっと言っていたなら牢と言う閉鎖された環境も相まって、鬱屈とした気持ちにもなるだろう。げに恐ろしいのはアッシュの無駄に強く矛盾したルークや自身を貶めた環境への敵意であった)。とは言えルークがグランコクマを出て相当に離れてしまえばそれまで・・・だった。

・・・結果、牢暮らしでまともに動いてなかったアッシュは抵抗こそしたが結局最後にはフリングスが見守る中・・・その命を落とすことになった、首をはねられることで。









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