時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

「彼女からしてみれば多少強引な事をしたとて世界の為なら、そして兄の真意を探る為なら自分の行動は許される物・・・許されてしかるべきとでも思ったのでしょう。ですがそう言った考えが間違いであると気付かせる事も無理に近く、やむを得ず謡将に説明を要求しましたが・・・あぁしなければ彼女は自分の価値を勘違いして恨み言を吐いたまま終わっていたでしょうね・・・」
「そうだったな・・・話を聞いて俺も何故そこまで自分の犯した罪を多大に過小評価出来る物と思ったんだったな・・・それも一度ヴァンを刺して謹慎程度で許された事や、ユリアの血族であったことが影響しているのだろうがな・・・」
更に事態が解決した時の事を思い出し、二人も苦い表情で目を閉じる。












・・・そもそもを言えばティアはルーク達と同様、アクゼリュスに送られた事で死を望まれた身なのだ。それもモースから見捨てられる形で、ルークの誘拐の件からの不遜な行動を死で終わらせる為に。

しかし改めてルークの件の罪ある行動を突き付けても、全くティアは悔いる様子を見せる事はなかった。その様子を見たフリングスは自身の口からダアトやモースの事を言ったとてまず聞き入れてくれるはずがない、そう考えた・・・そこでフリングスは考えた。兄であるヴァンの口からそれらを改めて口にしてもらうこと、それで駄目ならもうそのまま終わらせるということにする・・・と言う流れを。

それでヴァンに協力をしてもらい、ティアに事実を明かしてもらったのだが・・・これが予想していたよりも効果は抜群であった、ティアを黙らせるという意味では。それは何故かと言えばヴァンが言葉を選ばず、ティアにモースの思惑を告げたからである。例えば『ルークの件でモースはお前に対してユリアの血を持つ者と言う価値を見捨てていいと判断したが故にアクゼリュスに送り出した』、『そもそもモースがお前を無条件で信頼する道理などどこにあった?私を刺した事もだがルークの件を引き起こしたお前を』、『モースは最初からお前を信頼などしていなかった。精々何も知らないユリアの血族だったからこそ自身の配下に置いておいていいかと思ったくらいだろう。でなければカンタビレからの推薦の人物など奴が受け入れるはずがなかった』・・・と言った風にだ。

特にカンタビレの事を出された時、ティアもハッとしたように表情を青ざめさせていた・・・元々一部のダアトの人間の間ではモースとカンタビレと言う人物の仲は良くないことで有名だった。それをティアも知っていたからこそ、いや正確には思い出したからこそと言っていいだろう。現にカンタビレが地方に飛ばされる前にモースの元にかなり無理矢理ねじ込んだと言った風だったらしいとヴァンも当時を思い出したのだが、だからこそティアも少なからずヴァンの言葉に考えざるを得なくなっていたのだろう・・・本当に自分はモースに必要とされていたのかと。

・・・そんな初めてに等しく呆然としたティアの様子を見たフリングスだったが、それも持ち前の間違ったポジティブな解釈を取られてしまえばまた面倒な事になりかねない。そう思ったフリングスは一先ずヴァンをそこから離した上でティアも牢に繋ぎ直し、三日後に他の神託の盾と共に一斉に・・・処刑をした。



・・・おそらくティアの心中はごちゃごちゃした状態だっただろう。自身の信じたもの、それを揺るがされる事実を全く別の方向から明かされたのだから。だがもうそれも今となってはどうでもいい、何故ならティアを含めた他の神託の盾達はもう存在していないのだから・・・









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