時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

・・・そもそもからしてアニスが何故イオンのスパイをしていたのかと言えば、両親を守るためである。しかし事が露見し両親に降りかかった結末は借金から解放されこそしたが、自身は牢獄で罰を待つ身で両親はローレライ教団から離脱させられるという物であった。

これはアニスからして見れば非常に複雑な状態であると言えた・・・両親の解放を願ったのは自分。しかし結果として必死に動いてきたはずの自身が囚われの身なのに対して、何も知らずにいた両親は教団員でこそなくなったが文面から見れば自由の身。そんな自身の働きに反比例するような結末だが、両親が解放されて嬉しくもあり自分の今の状態が両親のせいでもあると知り憎くもある・・・簡潔にまとめこそしたが、アニスの心中は似たような考えが頭の中でグルグルグルグルと回り回っている事だったであろう。

・・・愛憎入り乱れた心中、喜ぼうにも喜べないし憎もうにも憎めない。それが故にアニスの心中は混乱していた、フリングスはそう見ていた。

・・・しかし動機がどうあれイオンを裏切り、マルクトに被害を与えた事に兵士として看過出来ない態度を取っていたことは同情が入り込む余地はなかった。もしもう少し空気を見てどう自身が動くかを考えて動ければまだ情状酌量の余地はあると見られていたであろうが、タルタロスの件はマルクトからすれば到底許せるものではない。故にフリングスはアニスに対してけして同情心など抱かなかった、年若いとは言え軍に属する兵士の身。そんな存在が自身の取ってきた行動の意味を理解出来ずにいたこと、それを認めるわけにはいかなかったから・・・












「・・・ただ確かその時、ティア=グランツに関しても多少面倒があったな」
「・・・えぇ。彼女に関してはルーク殿を始めとした件でキムラスカに送ろうと手紙を出したのですが、こちらで処分をするようにしてほしいと言われた時は正直困りましたね・・・」
それでアニスの話題から繋がるティアの事を面倒そうに思い出すピオニーに、フリングスも疲れたような声を上げる。












・・・神託の盾の処分をするにあたり、ピオニー達はかねてよりキムラスカとの国交を更に深める為の手段として考えていたティアの引き渡しをするべきとイオンの手紙が来てからマルクトからキムラスカに手紙を送った。ダアトより処分の許可が出たので、そちらに送るから似るなり焼くなり好きにするようにと。しかしキムラスカからすぐに返ってきた返信は要約すれば心遣いはありがたいが手間を省くという意味も含めてそちらに許可を出したとこの書面で示していいから、そちらで処断をする神託の盾と共に処断をしてほしいと言うものだった。

この事については別にピオニーとしても問題はなかった。返事の様子からして向こうも処分すること自体には反対ではないということであろうし、一々向こうに送る手間も金も省けるのだから。

故にピオニーはティアもアニスや他の神託の盾と共に処断を施すようフリングスに命じたのだが、そこでティアは酷く喚き出したのだ・・・不等だ、誤解だ、そんなつもりはなかった、キムラスカもマルクトも間違っていると。










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