時代と焔の守り手は龍の剣 epilogue

「まだラルゴに謡将、それに一般の神託の盾の兵士達はよかった・・・ですがアニス=タトリンは歳が幼いとは言え、自分はそこまで悪い訳ではないというスタンスを崩さなかったのは見るに堪えない物がありました・・・」
「そこで他の神託の盾も含めて導師より届けられた手紙を読んだら、一層泣き叫んだんだったか?」
「はい・・・イオン様がそんなこと言うはずない、助けてくださいイオン様!と。ですがその後導師から個人的に送られたタトリン夫妻の手紙を見せた後、先程までの態度とはうって変わり大人しくなりました」
「・・・それでようやく処分を受け入れられたと見られたんだったな」
「えぇ、本当に心から受け入れられたかどうかは定かではありませんけれど・・・」
・・・それでまず話題に上がるのは神託の盾の事だが、アニスがメインの物。当時を思い出し微妙な表情とニュアンスで話をするフリングスに、ピオニーもまた聞いた話を思い出しながら話の中身を先に進めていく。









・・・3年前、グランコクマからダアトに戻ったイオン。そのイオンから手紙が届いた、かねてより話をしていた神託の盾の処分を許可した物を示した手紙を。それで反応はフリングスが言ったような物だったのだが、そこでイオンはそうなることを見越していたのかそうしなければならないと考えたからなのか・・・タトリン夫妻と連名で書いた手紙を神託の盾の処分の手紙と共に送っていた。

その中身はフリングスもアニスが手放した後で拝見したから分かるのだが、中身を要約するとダアトに戻った後タトリン夫妻に借金の事を問いた上でアニスのやったことを洗いざらい言い・・・夫妻をローレライ教団から除籍した事、そしてアニスに対しての謝罪の文面が綴られていた。



・・・これはフリングスが知る余地もないことだが、イオンだけでなく詠師陣も借金の背後関係を洗い出している内にその額に頭を抱えた詠師陣はイオンに告げた。タトリン夫妻に借金をさせるよう仕向けていたモースを始めとする者達に全ての責任を押し付けるのは、タルタロスの件があるからマルクトの事を考えてもまず出来ない。ここはアニスの責任はアニスの責任、夫妻の責任は夫妻の責任と夫妻にも何らかの罰を与えねば示しがつかないと。

・・・詠師陣から導師として夫妻も処罰せねば示しがつかない、そう言われてイオンも表情を苦くした。だが悩みこそしたがイオンは夫妻を処罰することを自身の意志で選んだ、借金を無闇にし続けてきた夫妻にも責任はある・・・そう思っただけに。

・・・それでイオンは夫妻を呼び出した上で話した。アニスのしてきたこと及びその原因が夫妻にあることを。始め夫妻はなんでそんなことをと信じられない様子でいたが、自身らの借金が自身らの想像していた以上にアニスを苦しめ傷付け他の者達にまで迷惑をかけていたことを知ると流石に事態の大きさを把握したらしく、その姿は酷く落ち込んだ物へと変わった。

そんな姿にイオンは苦い心情を飲み込みながらも更に告げた。膨れ上がっていた借金自体は金貸しをしていた者達を捕まえそれが違法なやり方であったことから返さなくていいことになるが、騙されたと言うことを差し引いてもその額の大きさもある上にアニスをそこまで追い詰めたことに気付かなかったのには親として責任がある。故に命まで取りはしないが、悔い改めてもらう為の罰として教団から除籍してもらう・・・と。

この処分に夫妻は衝撃を受けながらも、教団員でなくなる事を受け入れざるを得なかった・・・アニスの事実を知ってしまったが為、自身らの考えなしの善意が事態を引き起こしたと理解したが為に。そしてそんな姿を見てイオンは夫妻にせめてと手紙を送るから書いてはどうかと言った・・・それが後にアニスに宛てられた手紙になる。



・・・それを見てアニスはうって変わって大人しくなったわけだが、その心中は見た目と違い相当に荒れているとフリングスは見ていた。










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