時代と焔の守り手は龍の剣 第二十二話

「・・・ならいいが、ついでに一つ言っておこう。お前が何を考えどう動くにせよ、これ以降は俺は余程でない限り住んでいる小屋から動くつもりはない。だから俺を頼ろうとするな、俺はもう手は貸さんぞ」
「・・・あぁ、分かってるよ。まだ俺に出来ることは少ないだろうけど、これからは俺自身でやることをやらないといけないからな・・・」
「・・・フッ」
比古清十郎は更に突き放すように注意を促すと、ルークも自覚はしていたようで分かってると力なくも言い、その返事に軽く笑む。
「・・・あっ、一つ聞いていいか?」
「・・・なんだ?」
「・・・多分これからお前もう俺と会うことないみたいに言ったけどさ・・・もしさ、行けるかどうか難しいと思うけど俺がお前の所に顔を出しに行ったら・・・会ってくれるか?」
「・・・何?」
と、唐突に何か思い付いたように質問をしてきたルークに比古清十郎は話を聞くが、その中身にたまらず眉を寄せる。自分に会いに来たいと言ったことに。
「何て言うか・・・お前って意味のない嘘つかないから本当に会うつもりないだろ、俺達に。だからさ、俺から会いに行きたいんだよ・・・色々世話になったし、これでお前と終わりってのもなんか嫌だって思ったしさ」
「そう言うことか・・・まぁ来るだけなら別に構わん、来れるならいつでも来い。どうせその時はお前はキムラスカに帰る前か後だろうからそう長くも滞在出来んだろうし、何度も来れんだろうからな」
「あぁ、そうする」
会う気がないなら会いに行きたい。比古清十郎の考えに沿って自身からと言うルークに比古清十郎にしては珍しくも来るならいつでも拒まんと相手の事情を考えた上で言い切り、ルークもその気遣いを快く受けて柔らかい笑みを浮かべた。
(フッ・・・変わったものだな、あの生意気だったガキがこうも丸くなるとは。まぁ言葉遣いは世辞にもよくなったとは言えんが、それでも気遣いに人の事を覚えた分には確かに成長と言えるだろう)
・・・そんな姿を見て比古清十郎は言葉にこそしないが賛辞を送る、ルークの成長を認めて。



・・・比古清十郎からしてルークと初めて会った時の印象はセカンの手紙もあって、何も知らない貴族のガキでアッシュのレプリカでしかなかった。見所と言う意味では良くも悪くも素直な所がほとんどであったが、それでもその見所に考えはティア達に比べれば遥かにマシと言える物であったことから少なからず比古清十郎の印象はそこまでは悪くなかったと言える。しかしそれはあくまでそこまで悪くない程度どまりでしかない。

ただアクゼリュス以降に関して言うなら間違いなく印象は良くなっていった、それも一度も下がることはない形でだ。とは言えまだ誰かの助けであったり教えがなければ甘い所があるとは言えるが、それはまだ生きてきた時間に軟禁紛いで屋敷に閉じ込められていた事を加味すれば比古清十郎からすれば許容出来る範囲の物と言えた。



(こいつはこれでいい・・・今年が終わればキムラスカに帰ることになるが、今のこいつなら悩みうちひしがれても立ち上がる事は出来るだろう。むしろこれからの時代に必要なのは迷いつつより良く先に行こうとする気持ちだ、預言の必要なくなった世界を作るにはな)
・・・そう言った評価を下せるからこそ比古清十郎は苦難があれどもこれでいいと思っていた、ルークならそれらを受け止めた上で行動してくれるだろうと。










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