時代と焔の守り手は龍の剣 第二十二話

「よし、では導師の事は決まったな・・・それで次にだがジェイド、お前はナタリア殿下の身柄をバチカルに送ってこい」
「は・・・私が、ですか?」
・・・セカンがそんなことを思っている傍らピオニーが続いてと話をするが、その命令にジェイドは面食らったように再確認する。
「そうだ。ナタリア殿下の事実を明かして戦争のリスクも下がった今、これ以上殿下をこっちで預かる理由もないんでな。そろそろあちらに帰して差し上げるべきと思ったんだ・・・そしてそれがジェイド=カーティス大佐として、お前が最後にやる任務になる・・・受けてくれるな?」
「・・・はい、慎んで承ります」
「「「「・・・っ!」」」」
ピオニーはそこからナタリアを送ると言った理由を説明するが、最後の任務と言った時に空気が重くなりジェイドが覚悟を決めたようにゆっくり頭を下げた事に周りの面々は驚き、一部の者は何とも言えない表情になった。






・・・そう、とうとうジェイドが自身で望んだように今までの行動の罰を下される時が来たのだ。とは言え今のジェイドは皮肉も言わず業務に全うに従事していることから、特に誰からも文句が出てくることもなくその処分を惜しむ者さえいるくらいだ。

そんなジェイドの最後の任務がナタリアのバチカルへの返還のお供・・・命じているピオニーからしてみれば皮肉でもなく適任と思ったから命じたのだろうが、最後がナタリアと言う事を皮肉に思えた者も少なくなかった。

何せナタリアはベルケンドからグランコクマに来てから、その現状を嘆き文句を言う以外にただ呆然としかしていなかったのだ。これはナタリアの部屋の警護を担当していた兵士からの話なのだが、それでもその話はグランコクマ内に瞬く間に広まっていった。

・・・確かにナタリアの事情を思えば一概に責めるようなことは言いづらいとは言える。だがそれでも物事には限度はある上、事情を知る者からすれば身から出た錆と言うのは明白な事でもあった。

その流れでマルクトの者からして一つ大きな問題と言えるのは、自身よりルークの事を悪いといった風に嘆いていた事だった。何せ口を開けば「私も悪いところはありましたがルークもあんな風に言わずとも・・・」「昔のルークはあぁではなかった・・・」と、自身はそこまで悪くはなく自身を守ろうとしないルークの方がより悪いといったスタンスを崩す事はなかったのだ。これはハッキリと言えば自身に非があるとは本当の意味で認めていない、そう言っているものと同義であった。同時にルークの方が間違っていると言っているものとも。

そもそもを言えばナタリアが王族でないとモースにバラされたのも、インゴベルトの命に背いてまでルーク達に付いていく事を極めて強引に決めたのが原因なのだ。モースの判断が人道的に非道であるのは確かな事ではあるが、そうまでさせたのはナタリアという王女の身分である人間を見捨ててもいいと思わせるような行動をしたからなのだ。事実、職務放棄に加えて王命に背く・・・これだけでも貴族として十分に失格と言える行動であり、それを自覚せず思い返しもしていないと言うことはマルクトの人間からしても不快であると言えた。そしてルークと比べるまでもなく、王族足り得ない人物であると言うことも。



・・・自身の事を振り返って悔い、先を自身で捨てる事を選んだジェイド。対しては自身の事を全く振り返ろうとせず八つ当たりし、辛うじて残った命以上の物を分不相応に求めるナタリア・・・このまま行けば結果としてナタリアは何だかんだで生き残る事になる、そう考えるとジェイドの立場から見れば皮肉に思えるような人選であった。







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