時代と焔の守り手は龍の剣 第二十二話
「ではそのようにするということでだが・・・貴殿には今導師守護役はいない。本来ならこちらから誰かダアトに戻るまで護衛をつけようかと思うがシンク、お前が行く気はないか?」
「私が・・・ですか?」
・・・そんなイオンの成長。それを見た後にピオニーはその帰途までの護衛についてシンクに話題を振り、当の本人はキョトンとした様子で丁寧に聞き返す。
「あぁ。話を聞けばお前はもう神託の盾にいる気もなく、しばらくは自由に動くつもりでいるのだろう。それでお前は何もしないならという条件で解放すると言うことになり、この後には晴れて自由の身となる。ただその前に神託の盾としての最後の役割で、導師をダアトまで護衛しないかと聞いているんだ。無論もうお前は自由の身になるから断っても構わんが、一緒に行くと言うなら護衛の報酬として金は出すぞ」
「・・・成程、そういうことですか」
「で、どうする?とは言っても導師はそれでいいのかを聞いてはいないが・・・」
「私はそれでいいですが・・・」
「・・・ならお引き受けしましょう。別に断る理由もありませんし、報酬もあると言うならなおのことです」
ピオニーは頷きつつも神託の盾としての最後の役目として護衛をしないかと言い、納得するシンクはイオンがそれでいいと自身を窺うように見てきた事でならと迷う様子を見せず返す。
「ではよろしくお願いします、シンク」
「はい、こちらこそよろしくお願いします導師」
イオンはそんなシンクに頭を下げよろしくと笑顔を見せ、そんなイオンに軽くシンクは頭を下げ平静な声で返す。そんな二人の姿をセカンは微妙そうな表情で見つめる。
・・・イオンとシンク、生まれが生まれ故にシンクはイオンの事を嫌っていた。代わりになれた代用品と、代わりになれなかった代用品・・・その差に生き方がシンクのイオンに対する想いを生んでいた。だがもうそれは過去の事である。
グランコクマにて過ごしていたこの数日間の間で、ルークに比古清十郎は当時アッシュ打倒の為の稽古の為に外に出ていたため二人しかいない部屋の中・・・セカンはシンクに対しかねてより思っていた事を口にした、「導師の事をどう思っているのか?」と。
セカンもそれは聞いてはならないことだと思いもした、生まれの事があるために。だが特にシンクと話すような話題がその時にあったわけでもなく、様々な思惑もあって知りたいと思ったが故に思わず発してしまった・・・が、失言だったと思うセカンに対しシンクから返ってきた答えはあっさりとしたものだった。「もうあいつと僕は関係無いからどうだっていい」と。
その答えに驚いたセカンは自身の失言を思い直すことなく再度問い掛けた、何故と。その問いにシンクは「・・・ま、昔は恨んじゃいたよ。けど今更あいつに恨みを向けたって何も変わる訳じゃないからね。むしろ向けた方が滑稽なだけって思ったんだよ・・・ルークを逆恨みばかりしてたアッシュの事を考えたらね」と、自身の考えていたことを口にした。更に「それであいつみたいにイオンを恨んだってなんにもなんない・・・そう思う内に別にどうでもいいかって思うようになったんだよ。別に僕は導師の地位が欲しいわけでも、是が非でもあいつを殺さなきゃならないこだわりもあるわけじゃなかったしね」とも口にした。
・・・そこまで聞きセカンは安心した反面、驚いてもいた。そこまで心変わりをしていたことに。昔は生まれの事から世界を恨みヴァン達に加担までして滅ぼそうとしていたのが、ここまで変わるとはと。
(・・・こういう風に変わったのはいいことなんでしょうね。ただ導師がシンクの事を知らないまま終わるかと思うと複雑な気はしますけど、多分これでいいんでしょうね・・・シンクの事を知ったなら導師は少なからず傷付くでしょうし・・・)
・・・シンクの考えを知ったからこそ、下手にそれをイオンに伝える気にはなれない。吹っ切ったシンクにはイオンの気遣いは余計な物で、邪魔になる。
そう思ったからこそ最後の上司と部下としての姿に、セカンはこれでいいのだと何も言わずに口をつぐもうと心に強く決めた。
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「私が・・・ですか?」
・・・そんなイオンの成長。それを見た後にピオニーはその帰途までの護衛についてシンクに話題を振り、当の本人はキョトンとした様子で丁寧に聞き返す。
「あぁ。話を聞けばお前はもう神託の盾にいる気もなく、しばらくは自由に動くつもりでいるのだろう。それでお前は何もしないならという条件で解放すると言うことになり、この後には晴れて自由の身となる。ただその前に神託の盾としての最後の役割で、導師をダアトまで護衛しないかと聞いているんだ。無論もうお前は自由の身になるから断っても構わんが、一緒に行くと言うなら護衛の報酬として金は出すぞ」
「・・・成程、そういうことですか」
「で、どうする?とは言っても導師はそれでいいのかを聞いてはいないが・・・」
「私はそれでいいですが・・・」
「・・・ならお引き受けしましょう。別に断る理由もありませんし、報酬もあると言うならなおのことです」
ピオニーは頷きつつも神託の盾としての最後の役目として護衛をしないかと言い、納得するシンクはイオンがそれでいいと自身を窺うように見てきた事でならと迷う様子を見せず返す。
「ではよろしくお願いします、シンク」
「はい、こちらこそよろしくお願いします導師」
イオンはそんなシンクに頭を下げよろしくと笑顔を見せ、そんなイオンに軽くシンクは頭を下げ平静な声で返す。そんな二人の姿をセカンは微妙そうな表情で見つめる。
・・・イオンとシンク、生まれが生まれ故にシンクはイオンの事を嫌っていた。代わりになれた代用品と、代わりになれなかった代用品・・・その差に生き方がシンクのイオンに対する想いを生んでいた。だがもうそれは過去の事である。
グランコクマにて過ごしていたこの数日間の間で、ルークに比古清十郎は当時アッシュ打倒の為の稽古の為に外に出ていたため二人しかいない部屋の中・・・セカンはシンクに対しかねてより思っていた事を口にした、「導師の事をどう思っているのか?」と。
セカンもそれは聞いてはならないことだと思いもした、生まれの事があるために。だが特にシンクと話すような話題がその時にあったわけでもなく、様々な思惑もあって知りたいと思ったが故に思わず発してしまった・・・が、失言だったと思うセカンに対しシンクから返ってきた答えはあっさりとしたものだった。「もうあいつと僕は関係無いからどうだっていい」と。
その答えに驚いたセカンは自身の失言を思い直すことなく再度問い掛けた、何故と。その問いにシンクは「・・・ま、昔は恨んじゃいたよ。けど今更あいつに恨みを向けたって何も変わる訳じゃないからね。むしろ向けた方が滑稽なだけって思ったんだよ・・・ルークを逆恨みばかりしてたアッシュの事を考えたらね」と、自身の考えていたことを口にした。更に「それであいつみたいにイオンを恨んだってなんにもなんない・・・そう思う内に別にどうでもいいかって思うようになったんだよ。別に僕は導師の地位が欲しいわけでも、是が非でもあいつを殺さなきゃならないこだわりもあるわけじゃなかったしね」とも口にした。
・・・そこまで聞きセカンは安心した反面、驚いてもいた。そこまで心変わりをしていたことに。昔は生まれの事から世界を恨みヴァン達に加担までして滅ぼそうとしていたのが、ここまで変わるとはと。
(・・・こういう風に変わったのはいいことなんでしょうね。ただ導師がシンクの事を知らないまま終わるかと思うと複雑な気はしますけど、多分これでいいんでしょうね・・・シンクの事を知ったなら導師は少なからず傷付くでしょうし・・・)
・・・シンクの考えを知ったからこそ、下手にそれをイオンに伝える気にはなれない。吹っ切ったシンクにはイオンの気遣いは余計な物で、邪魔になる。
そう思ったからこそ最後の上司と部下としての姿に、セカンはこれでいいのだと何も言わずに口をつぐもうと心に強く決めた。
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