時代と焔の守り手は龍の剣 第二十二話

「・・・集まったな。では早速始めるか」
ピオニーは自身の前に集まったルーク達を前に開始をすると宣言し、イオンの方に視線を向ける。
「まずは導師だが・・・事が終わった今、そろそろ貴殿も帰らねばならないはずだがいつ頃帰るつもりでいる?」
「出来れば早い内に帰りたいと思っています。今の私がダアト内でどのように思われているかはわかりませんが、導師は私しかいないので・・・」
「そうか、そう言うことなら引き留める訳にはいかんな・・・だが帰る前に一つ確認しておきたいことがある」
「なんでしょうか?」
「今こちらで預かっている神託の盾所属の者だが、妖獣のアリエッタにディストにシンクを除きそう遠くない内にこちらで罪を照らし合わせて処断するように打ち合わせている。そしてそうなれば幹部クラスは勿論の事、相当な数が厳罰に処されるだろう・・・そこで聞くが、貴殿はダアトの名を持ってその者達を引き取ろうとする考えはあるか?」
「・・・っ・・・」
まずはといつ帰るのか、そう聞かれイオンは早い内にと平静に答える・・・だがピオニーの聞きたいことはどうやら後半だったようで、答えるようにと威圧をかけられヴァン達にティア達までもを含めた神託の盾の処分について質問してきて、イオンはたまらず苦い顔になる。
「・・・いえ、そのようなことはしません」
「ほう」
だがすぐに真剣な表情で否定を示したイオンに、ピオニーから自然と感心の声が漏れる。
「おそらく彼らをダアトが引き取った所で他の者達がすぐに彼らを裁くようにとの要請をしてくるでしょう。そうなれば言ってはなんですが遅いか早いかに場所が違うだけで、結果としては同じような物に終わるだけの可能性もあります。それに下手に動かす方が危険だとも思われますから・・・ですからそちらで処断を下すというなら、下してください」
「そうか、ならそうさせてもらおう・・・とは言え後で面倒になっても困るから、貴殿がダアトに戻ったなら神託の盾から解雇した後処遇を委ねるとの書状を送るように手配を頼む」
「・・・はい」
イオンは自身でそうすると決めた経緯を口にし、それを聞きピオニーはとってほしい行動と安全策を提示しイオンも静かに頷く。



・・・イオンが自身で言ったが、ここまで来ればもうヴァン達をダアトが引き取る理由はハッキリとないと言えた。そしてそうなる理由はメリットがないというより、デメリットしかないのが大きい。

もしダアトが引き取ると言うならグランコクマからわざわざダアトまで船で神託の盾の下っ端までもを送らねばならないことになる・・・上の者だけが引き取られて下の者が置き去りと言うのは、道理に合わないだろう。だが引き取るなら引き取るでその護送に兵力をつけなければならず、人数が多ければ多いほど人員も割かねばならないしその分の給与も無料ではないのだ。マルクトからでもダアトからでも、その手間に金は馬鹿にならない。

その上更に言えば何を思ってか、ヴァン達を助け出さんとする輩が現れてもおかしくはないのだ。完璧にヴァン達一味を壊滅したと言い切れる訳ではない為、その可能性がないわけではない。それに外部だけに敵がいると限られた訳ではない、ダアト内部にヴァン達を擁護して助けようとする者がいる可能性だってあるのだ。(忘れられがちだが)ヴァンは神託の盾内ではカリスマを持って兵を統治していたのだ、全くない可能性ではないだけにダアトに戻した方が危険ということは有り得なくはない。

そう考えれば結末が一緒ならマルクトでこのままヴァン達の処断を済ませた方がいい、そうなるのは当然と言えた。



・・・だがそれでもイオンがここまで冷静な判断を苦渋の表情あってとは言え下せたのは、確かな成長と言えた。

しかしそれも成長のせいもあるだろうが、ヴァン達がマルクトの法でもダアトの法でも救えない程の事をしていることがあっての物であった。それこそ言葉にはされていないが、死罪以外に有り得ない事をしたことが・・・イオンもそう理解しているからこそ諦めたと言った方が正しいだろう。









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