時代と焔の守り手は龍の剣 第三話

・・・そう、逆刃刀。比古清十郎より託された逆刃刀をルークに、セカンは納刀しながら差し出す。
「これは普通に切り付けても、当たり所が悪くさえなければまず人が死ぬ事はありません。突いたり逆刃を返さない限りは打撲や骨折で済みますので、本当にもしもの場合にだけお使い下さい」
人を殺すのは嫌だが自衛をしなければ危ない場面も出て来るかも、そんな場面にある意味一番相応しい物であるのがこの逆刃刀。
セカンはそう思ったからこそ逆刃刀を持っておいてもらおうと人を殺さないような扱い方も含めて提案したのだが、ルークは疑問の視線で逆刃刀を見る。
「・・・なんでこんな変な刀があるんだ?普通の刀として使えないような変な物をなんでセカンは持ってるんだよ?」
「それは・・・師匠に斬ってはまずいと思うような時はこれを使えって、持って行かされたんです。こんな刀がある理由は、稽古の時に真剣の感じを持って剣を振れるようにするために作らせた特注品なんです。これなら下手に刃を向けられても惨事になることは少ないですから」
そして至極当然と言える刀としては不自然な形をした逆刃刀を持つ理由とある理由を問われ、セカンは本当の事を話す。
「・・・とにかく、これはしばらくルークさんに預けます。一応師匠からの預かり物ですから私が帰るまではそれをもしもの時は使ってください、そしてそれからは私が片をつけますので」
「・・・わ、わかった」
だがこれ以上話していてはジェイド達に置いていかれると感じてセカンは早々に話を進め、ルークも勢いに押されながらも逆刃刀を受け取る。
「では行きましょう」
「・・・ああ」
そしてセカンの声をきっかけに、前を行くジェイド達を二人は追いかけていく・・・









・・・そして神託の盾達から隠れながらタルタロスを進んでいたセカン達。すると左舷ハッチの入口付近でセカン達はアッシュを止めた金髪の女と二人程の神託の盾兵、そしてイオンがその三人に連れられハッチの外へと続く扉へと消えていくのを目撃した。
「リグレット教官・・・」
それを見届けると、ティアがボソッとどこか敬愛の色が伺える面持ちで呟く。
「魔弾のリグレットですか、厄介ですね。それにアニスがいない所を見ると、合流地点に行く事を選択したようです」
その呟きを拾いジェイドが冷静に状況整理をする。
「・・・非常停止したタルタロスの唯一の出入口である左舷ハッチには他の神託の盾は見受けられません。少し危険ですが今が好機です、イオン様を助けると同時にタルタロスを脱出しましょう」
「・・・そうですね」
降って湧いたかのような敵だらけの周りの現状から、イオンまで一緒に助けられるだろう好機もついての脱出の機会の出現。これ以上手をこまねく気はないセカンは同意するが、隣のティアを見る視線は疑問形そのもの。
「・・・魔弾のリグレットを教官と呼んでいましたが、上官と生徒か何かの関係だったんですか?」
「・・・えぇ、そうよ」
だが疑問を疑問のままにしておくことの方が危険だと今までから感じていたセカンは、ティアにリグレットとの関係を問う。ティアは問いに案の定どこか深い関係を匂わせるように答え、セカンはその様子に一瞬眉をしかめかけるが真面目な表情に戻す。
「・・・今は無事に導師を助け、このタルタロスから一刻も早く離れる事が大事です。リグレットを倒せとは言いませんので、貴女は導師を守る事を優先して動いてください。リグレットは私が抑えます、いいですね?」
「・・・それは・・・いえ、わかったわ」
セカンから切り出された話は明らかにリグレットとティアをぶつけないようにした物。ティアはすぐにセカンに反論しようとしたが有無を言わせない真っすぐした強い視線に、これまたすぐに意見を翻しセカンの言う通りにすると言う。
「ルークさんは私達が先に行って少し間を空けてから来て下さい、それでいいですね?」
「ああ、わかった」
「では行きましょう、ジェイドさん」
「ええ」
ティアに釘を刺し終え今度はルークとジェイドの二人に声をかけ、セカン達は段取りよしと左舷ハッチの方へと歩きだす。
・・・これでよし、セカンは不安要素であるティアが何かやらかさない限りは大丈夫だろうと自信を持っていた。









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