（上手いものだな・・・あの予定外の刺客をこうも逆手に取るとは）
その光景を一人冷静に見ていた比古清十郎は内心で感心していた、そのとっさに取った行動の手腕に。
（あいつなら余程の事がなければマルクトを預言無しで安定させた上で発展させるだろう、とりあえずは心配はいらんか・・・）
だからこそ比古清十郎は安心出来るだろうと見切りを入れる・・・とは言えピオニーが道を踏み外したなら即刻切り捨てに行く気は満々であるが。



「・・・時間を取ってしまったな。では改めて今からルーク殿にローレライを送るための用意にかかってもらおうと思う」
・・・少しして聴衆のテンションも下がって声も収まり、ピオニーは改めてと口を開く。
「ただ今度は同じようなことをするような者はいないと思うが、流石にルーク殿の安全面を考えれば少し用心をせざるを得なくなる・・・済まないが兵士である程度距離を取るようバリケードのラインを作らせてもらう、そのラインまで下がってくれ・・・アスラン、兵を指揮してくれ」
「はっ！」
‘‘‘‘・・・’’’’
しかし再度の危険は犯せないと対策を取ると言いつつピオニーはフリングスに指示を出し、兵も含めてテキパキと動き出すその姿に聴衆は自主的に後ろに向かうよう動き出す・・・聴衆もピオニーの判断は妥当と思ったのだろう、その行動に迷いはなかった。



・・・そして少しして兵士のバリケードが作られ、檀上と聴衆との距離は大分空けられた。
「さて・・・少し声は聞き取りづらくなっただろうが、改めてローレライを見送りたいと思う。ではルーク殿、頼む」
「はい・・・！」
状況も落ち着いた所でピオニーが再開を告げ、ルークはその声に従い目を閉じてローレライの鍵を上に掲げ集中を始める。すると先程のようにどんどんと第七音素の光がルークの周りへと集まっていく。
『・・・よし！我が音譜帯に向かうに十分な音素は貯まった！ではさらばだ、皆の者！・・・頼むぞ、ルーク！』
「あぁ！・・・おぉぉぉっ・・・！」



‘ドオーンッ！’



‘‘‘‘・・・っ・・・’’’’
・・・そしてローレライからの別れの声がかかってルークの叫び声が辺りに響いた後、収束した大きな第七音素の光は一気に上空へと爆発音にも似た音と共に上昇した。その光景に聴衆の目が驚きに見開かれ制止をする、そんな中・・・
「・・・ルーク殿、大丈夫か？・・・ローレライの鍵は？」
「はい、大丈夫です・・・鍵は、ローレライが持っていきました。この鍵が後の争乱を招かないようにするためにと・・・」
「そうか・・・」
光が晴れ檀上にいたピオニーがルークの体の安否に、いつの間にか無くなっていた鍵の行方について声をかけていた。その問いかけにルークは平気と答えながら鍵はローレライが後を考えて持っていったと神妙に答えれば、ピオニーも神妙に頷き聴衆の方へ視線を向ける。
「・・・今、ローレライは確かに音譜帯へと登った。ローレライの言葉が正しいなら、いずれローレライは音譜帯で第七の帯に留まり我らの行く末を見定めることだろう。そしてプラネットストームを再構築出来るローレライの鍵もローレライ自身が持っていった、これでまず音素を再び復活させることは不可能になった・・・だがこの事に悲観してはならない、我々は新たな時代を生きねばならないのだ・・・だからこそ我らはローレライに誓おう、これよりの時代を我らは共により良き未来にせんとすることを！」
‘‘‘‘ワァーーーッ！’’’’
最初は独白、次第に語りかけるように。ピオニーの壮大でいて緩急のついた語り口に、聴衆は一斉に歓声を上げた。共にと自身らを求められているという言葉に盛大に同意するように・・・








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