時代と焔の守り手は龍の剣 第二十二話

・・・そこからピオニーの威厳に満ちた弁舌は人々の耳に確かに届けられた。心無き者達、疑心を持つ者達、預言を盲目に信じローレライをただ盲目に崇める者達、そして真摯に事態を受け止めようとする者達に向け。






「・・・それで我らはローレライの声を聞き、人々に区切りをつけてもらうために今この場を用意したのだ。ローレライを譜石帯に送る為に」
‘‘‘‘・・・’’’’
・・・ローレライの意志、それは自身に預言を頼ろうとするのをやめて欲しいということ。
ピオニーの口から語られたこの場を用意した目的と理由を聞き、話の最中はざわざわとしていた聴衆達もその想いにあてられて揃って静かに言葉に聞き入っていた・・・この辺りは流石賢帝と呼ばれる程のカリスマと言えよう。
「・・・さて、長々と話したがそろそろローレライを音譜帯に送りたいと思う。ではルーク殿、頼む」
「はい、陛下」
そしてピオニーから視線を向けられ出番と言われたルークは一歩踏み出し、ローレライの鍵を天へと向けて掲げる。
「・・・じゃあローレライ、行くぞ」
『心得た』
ルークの声にローレライも答え、集中して目を閉じるルークの周りに第七音素の光が集中しだす・・・プラネットストームが止まり時間が少し経過していることから、完璧な超振動を使うにはローレライでも少し時間が必要になる。そう聞かされていたピオニー達はその光景を黙って見守る。



‘ヒュンッ’



・・・その刹那、聴衆の中から何かが空を切り裂くような音が聞こえた。



‘キィンッ’



「・・・えっ?」
・・・次に鳴り響いた音は何か金属と金属がぶつかり合ったような音。それもルークの相当に近くから聞こえた。その音の事が気になり目を開けたルークが目にしたのは・・・
「セカン・・・?」
セカンの後ろ姿、それも刀を抜いているように見える姿だった。
「・・・そこの人、ボウガンを捨ててください!貴方が攻撃した瞬間、私は確かに見ていました!」
「えっ、ボウガン・・・っ!?」
何をしたのか、そう疑問に思ったルークだったがセカンが指を指した相手と近くにあったボウガンの矢らしき物が落ちている事に戦慄した・・・自分がその男にボウガンで狙われ、セカンが刀を抜いて自身を守らなければ自分は死んでいたということに。
「くっ・・・どけっ!どけっ!」
「キャアァァァッ!」
聴衆の中にいた指を指された男は状況が悪いことを察し、ボウガンの矢を再びセットしそれを前に出しながら聴衆を脅し無理矢理に道を空けさせる。
「どけ、そこの男!」
「・・・フン」
「あっ・・・」
しかしそうやって人をどかしていっても、どかない者がいた。男が苛立ちにボウガンを発射しようとしたが、その相手は不遜に鼻をならす。その相手を見た壇上にいた人間は全員、驚きに口を開けていた。
‘ヒュンッ、パッ’
「なっ・・・!?」
「・・・本来なら一刀の元に切り捨ててやるのだが、華の舞台に血の雨を降らせる気はない。しばらく苦しめ」
‘ゴッ!’
「がっ・・・はっ・・・!」
男の発射した矢は相手の顔面を正確に捉えていた、が・・・相手が悪かった、比古清十郎が相手では。
高速のボウガンの矢を素手で掴み取った比古清十郎に愕然と男が驚く中、矢を捨て冷たい視線で鞘ごと刀を腰から抜き男の鳩尾に比古清十郎は突きを見舞った。その突きに何も反応出来ず、男は地面に倒れ伏せ苦痛にもがき苦しむ。
‘‘‘‘・・・’’’’
「・・・」
「っ・・・誰か、その不審者を捕縛せよ!その者はルーク殿の命を狙った不届きものだ!」
「は、はっ!」
誰もが唖然とする中、比古清十郎から強い視線を向けられたピオニーはハッと気を取り直し兵士に捕縛を命じ兵士もその声でようやく動き出す。








17/31ページ
スキ