時代と焔の守り手は龍の剣 第二十二話

「・・・くそがあぁぁぁっ!」
だがアッシュはその瞬間怒りに身を震わせ、大声を上げながらルークに斬りかかる・・・だがその行動は端から見ればルークに圧されたというアッシュにとって屈辱的な事実を必死に誤魔化そうとするものにしか見えなかった。
‘スカッ’
「なっ・・・!」
‘ゴッ!’
「がっ・・・!」
しかし我を見失っているアッシュの振り下ろしの一撃を冷静になっているルークは落ち着いて左側に身を寄せてかわし、同時に強烈な振り下ろしの一撃をアッシュの脳天に食らわせ苦悶の声と共に地面に叩き伏せた。
「・・・ぐっ・・・くっ、くそ・・・っ!」
「はっ!」
‘ガッ!・・・カラカラカラ・・・’
「ぐあっ!」
倒れ伏し痛みに声を上げながらもアッシュは尚も戦闘意欲を失わず、地面に手をつき立ち上がろうとする。その姿にルークは剣の握られた右手の手首を蹴り、ダメージを与えると共にその手から剣を弾き飛ばさせた。
「っ・・・クソッ、テメェ・・・こんな時に剣を狙って、恥ずかしくねぇのか!?」
「は?敵の武器を使えなくすんのは戦術として当然だろ、何言ってんだよ。それともお前、戦ってて相手が武器が使えなくなったら一々取りに行かせてたのか?それに大体お前分かってんのか?・・・この逆刃刀が普通の剣だったら、もうお前二回は死んでんだぞ」
「!!」
武器が遠く離されてしまった事で、アッシュはルークを見上げながら朦朧とした視線で決闘のルールに則っていないだろうと責める。しかし武器を狙ってはいけないというルールがない上に皮肉を効かせた返しをし、更に普通の剣だったらと仮定をするルークにアッシュはたまらず返す言葉がなく絶句した・・・胴を切り払う一撃と頭への一撃、これが真剣だったなら間違いなく死に至る一撃なのは部所が部所なだけに明白だった。
「・・・まぁ逆刃刀を使うって選んだのは俺だ、それで攻撃を当てたからって勝負ありにしようなんて思ってねぇ」
しかしとルークは真剣だったならという仮定を勝敗に適応しないと、自らその言葉を首を振って否定する。それでルークはそう言い終わると、ゆっくり逆刃刀を上に持ち上げる。
「だから勝負が終わる時はお前が降参するか・・・お前が倒れるかだ!」
「っ!」
‘ブンッ’
「・・・避けたか」
そしてそのまま勝敗のつけかたを自身で宣告しながら逆刃刀を振り下ろすルークだったが、なんとか転がって身をよじり避けたアッシュに冷静に視線をやる。
「くっ・・・くそっくそっくそっ!・・・お前なんかに、負けてたまるか!この屑があぁぁぁっ!」
その視線にまた苛立ちアッシュは立ち上がって、ルークに素手で殴りかからんと走り出す・・・もうその姿は現実を認めたくないというだけ、破れかぶれにしか見えない。その光景を見ていた比古清十郎達の目は既に冷めた目に変わっていた、結果の見えたその勝負に対し。
「はあぁぁぁっ!」
‘スカッ’
「っ・・・!」
「・・・はぁっ!」
‘ゴギャッ!’
「ぐあぁぁぁっ!」
ルークの目の前に来て右拳を思い切り振り切るアッシュ・・・だが横に顔を反らし難なく避けたルークが避けざまに放った腹を狙った振り抜きの一撃は、痛めたアッシュの右の肋骨を捉え鈍い音をハッキリと辺りに響かせた。たまらず苦痛に叫び声を上げるアッシュは腹を押さえ、地面に倒れ込む。
「・・・っ・・・!?」
「・・・もう寝ろ」
だがそれでも尚立ち上がろうと視線を上に向けるアッシュだったが、その視線の先にルークがおらず後ろから声が聞こえてきた事に急いで振り返ろうとした。
‘ザッ’
「っ・・・」
しかしそれより早く逆刃刀が首筋を捉えた事で、その衝撃にアッシュは前のめりに倒れた。
「・・・どうやら勝負は決まったようだな。そこまで!勝者はルークだ!」
そして少し時間が経ち立ち上がることがないその姿を見て、ピオニーは宣言した・・・ルークの勝ちだと。









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