時代と焔の守り手は龍の剣 第三話

・・・二重の意味での危険の一つ目の理由は、ルークがそこで死んでしまったらという物だ。

これはここが互いの存在をかけた戦場という場であるため、一つ見極めを誤ればルークは死んでいてもおかしくはなかった。もしルークが死んでいてジェイド達だけがおめおめ生き残りキムラスカに行ったとしたなら、まずキムラスカはダアトもだがマルクトを許しはしない。実際に手をかけたのは神託の盾だが、ルークを前線に立たせ死なせてしまったのはマルクトがその状況を作ったから・・・キムラスカの王族で次期王となるルークを死なせたならその死を大儀に掲げ最悪二国を相手取って、キムラスカが戦争を開始する可能性が高い。それ程の危険があるのだ、ルークの死は。

・・・そして第二の理由は、マルクトがキムラスカを下に見ていると思われるような行動の仕方だ。

本来は戦時下において軍人という者は、一般市民から見て頼るべき人間にカテゴライズされるべき職種だ。そして緊急時において優先すべきは戦うことではなく、人々を守ることである。元々の軍人の役目は国を守り、人を守る為の自衛力であるべきなのだ・・・本来なら。

だがジェイド達は他国の人間であるルークを守るどころか、前線に立たせている。もちろん戦場という場でルークに危害が加わらない保障などどこにもないが、あくまでも剣を抜くのは最終的な自衛手段としてあるべきなのだ、ルークが戦うというのは。セカンは自身がジェイド達に任せられないと考えている為に自身の意志で戦っているのでいいのだが、ルークは違う。

タルタロスを取り返すと言ったのはジェイドで、巻き込まれたのはルーク。見張りをしろと言ったのはジェイドで、しろと言われたのはルーク・・・これだけ聞けばキムラスカはどういうことだとマルクトに詰める材料を得たも同然だ。
恐らくジェイドの言い分として言いそうなのは戦時下だったので一時的に自分の指揮下に入ってもらった、と言うのが可能性が高い。確かに戦場での混乱を避ける為、軍の指揮下に民を置く処置を取る事は適切ではある。しかし行き過ぎた指示を出してしまえばそれは当然、軍紀違反の越権行為にあたる。それが他国の貴族なら尚更だ。

なら緊急時で指揮下に入ったなら次期王をこき下ろすのがマルクトのやり方なのかとキムラスカが詰めれば、マルクトはそうですとは絶対に言えない。更にトラウマを植え込むような戦闘をさせてしまったとばれればいよいよ言い訳は効かない、本格的に戦争への道は開いてしまうだろう。

・・・ルークを戦わせた危険性を理解どころか、タルタロスとイオンを取り戻す事がそんなことより大事と一瞥すらくれない。セカンがそんなジェイド達を信用出来ると、思う訳がなかった。



「・・・でも、それでもセカン。お前が俺を守るって言っても、絶対に俺のとこに敵が・・・人が来ないなんて限らねーだろ・・・そうじゃねーのか?」
「っ・・・それは、確かにそうですね・・・」
そして考えをまとめたルークは不安そうな顔で顔を合わせながら問い掛けてきて、その思い詰めた声にセカンは詰まりながらも自身も考えていた事だけに自らの自信と腕も関係なく否定が出来ずただ肯定する。
「その時って、俺はどうすりゃいいんだ・・・?俺はどうすりゃいいんだよ・・・なぁセカン・・・?」
セカンが肯定したことでルークはその場面を想像して身を震わせ、涙を浮かばせながらセカンを見つめてくる。
「・・・わかりました。もしもの場合が来たら、これを使ってください」
「・・・これは・・・えっ?」
そんなルークを見て考えたように頷くとセカンは腰に挿していた刀を取ると、ルークの前で鞘から取り出す。それを見てルークは違和感を覚える。



「これは逆刃刀という物で、普通の刀とは違います。もしもの場合はこちらをお使いください」










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