時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

「とりあえず後始末はこいつらに任せて戻ろうか、いつまでもここにいちゃ夜って言っても他の人に目撃されかねないからね」
「そうするか」
「後はよろしくね、二人とも」
「「はい(でガス)」」
そんな中でノワールの後ろにいた漆黒の翼の二人がさっと場の片付けに入った様子を見ながら、ノワールと比古清十郎は二人に後を任せその場を後にする。









「・・・ふぅ」
「あら?流石のセンセイも少しお疲れ?」
「・・・肉体的な物ではない、どちらかと言えば気疲れだ」
・・・それで二人が向かったのは国境をまたぐ酒場の中。ただそこで疲れたような息を吐きながら眉間にシワを寄せて椅子に座る比古清十郎にノワールが珍しいと軽く言えば、当の本人もまた珍しく気疲れとは言いつつも疲れたと認めるよう返した。
「こうも預言に未練のある者が多いと思っていなかったからな・・・それもあれだけピオニーが預言を詠み続けることにプラネットストームを停止するべきと言ったのに、それを理解せず無理矢理にでも預言を詠む環境だけを求めるというのがな・・・」
「あぁ・・・私達からすればわかるんだけれどね、預言に従ってもいいことだけじゃないってことは。けど預言で不幸になったことがない人間、いや不幸になっても最終的にいい結果に繋がるなら預言に従うなんて人間もいるくらいだからね・・・そんな預言を盲信する人種からしたら預言を無くす悪に見えるんだろうけど、それでも現実を見ないってのはどうもね・・・そんな奴らを何グループも相手にしてたらそりゃいくら自ら望んでやってたって気疲れはするよ・・・」
そしてそのままに比古清十郎は状況を理解しない連中に対して愚痴り、ノワールも心底から先程やったことに同情する。



・・・さて、比古清十郎が何故このような事になっているのかと言えばそれは首脳会談の場での決定がここから広まれば各国の首脳・・・特にマルクト側が危なくなると考えたからだ。そしてそれが、ピオニー達から離れた理由の核でもある。

比古清十郎は考えた・・・各国の首脳が集まる以上ケセドニアの街中に何が目的で集まるのか。それを人々が知りたがるのは必然の流れになり、街の代表であるアスターがどんな理由で集まっていたのかを説明を求められるだろう。そうなれば近い内に事情を話すことになって、なおかつ自身の知るアスターの性格から考えてその決定を受けてその日の全員集まっている内に大々的にケセドニアに知らせる行動を取る可能性が高い・・・と。

そう言った事からピオニー達がケセドニアに滞在する内にアスターが行動すると考え、比古清十郎は事前にケセドニアに来てノワール達に接触して頼んだのだ。『もし事実を知ったなら暴走して騒ぎを起こす輩が出てきたら面倒、そう言った輩が行動を起こす前に事前に動きを察知出来るような体制を取ってくれ』と。これは漆黒の翼としてノワール達もすぐに了承した、預言が無くなる絶好の機会だと。

・・・独自のネットワークを持つ漆黒の翼は街中に不穏な動きをする者がいたらすぐに報せるようにと息のかかった人達に言って情報を集め、それを比古清十郎に伝えて直々に動く・・・それが比古清十郎の決めた、ピオニー達を守るための行動の流れだった。預言にプラネットストームを止めるという流れを決して潰させない為に。

それが先程の行動の真の意味である・・・皇帝陛下を殺してまで預言を取ろうとするような者達を説得する意味も義理もないし、そのようなことをするのだから説得程度では意味がない。だから説得などせず最初から切り捨てる、そう決めたが故の事なのだ。



・・・ただそれでも反発する人間の数が多いというのは、比古清十郎からして愚かしいとしか思えない行動だった。そんな人物達ばかりいるとなれば、気疲れするのもある意味当然と言えた。









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