時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

・・・大きな成功の後の少しの悲しみ。そんな姿が見られはしたものの時は過ぎ、ケセドニアの街並みは夜になるとピオニー達が領事館に戻った後の昼間の喧騒も収まり静けさを取り戻していた。だがその街角の一角でコソコソと動いている者達がいた・・・






「・・・おい、本当にやるのか・・・?」
「・・・我慢出来るはずがないだろう、預言が詠まれなくなるような事態になるなど・・・!」
・・・十人程の男達が集まる中で一人の男がリーダーとおぼしき男に正気を疑う声を向けるが、憤りを浮かべた声と目を持って返す。預言が無くなる事態は避けねばならないと。
「でもそうしないと、世界が危険だって・・・」
「あれはマルクトが仕掛けた事だ、偽物の預言をあたかも本当の預言のように詠んだように見せただけだ!・・・俺は信じんぞ、預言を否定するマルクトもローレライも・・・それにこの場の皆は、その為に集まったはずだ!世界から預言を無くそうとする逆賊、マルクトのピオニー以下の命を奪うために!なのにお前はそれを止めるというのか!?」
「預言がなくなってほしいって思って俺は言ってるんじゃない、ちゃんと事実かどうかを考えなきゃいけないだろうって言ってるんだ!」
それでリーダーと男の言い争いは激化するが、リーダー以外はリーダーに寄った立場で頷いていて男に対して微妙な気持ちを抱いてるように見ている。
「・・・もういい、お前とは話にならん!ここで待ってろ、俺達がピオニーの首を取り預言の意義を取り戻したという報告をな!」
‘ガッ’
「くっ・・・!・・・えっ・・・?」
そんな中で預言に執着しているリーダーは正論を一切耳に入れようとせずに預言の為にピオニーを殺しに行くと言い出し、男を壁際に突き飛ばす。男は痛みに顔をしかめながらもなんとか止めようと動き出した一団に近付こうとするが、突然その男は立ち止まる。
「・・・誰だ、お前は・・・?」
そうなった理由とは意気揚々とした一団の前に現れた人物がいたから。その人物に男が注目する中、リーダーも何者かと尋ねる。



‘ザンッ’



「「「「っ!?」」」」
・・・だがその瞬間、リーダーを含め一瞬で三人がその人物が腰に挿していた刀で斬られた。胴体が撥ね飛ばされた光景を前に、男に残りの面々も驚きに固まる。
‘ザッ、ザンッ!’
「・・・っ!」
その瞬く程の一瞬の間、続いて男は流れるような動きで残りの一団の人間が二撃でまとめて斬って棄てられる瞬間を目撃した。
「・・・フン」
「ひっ・・・!」
場に残ったのは男一人、そんな姿に惨劇を作った人物は興味なさげに鼻を鳴らしゆったりと近付く。
「・・・おい」
「はっ、はい・・・!」
「今すぐこの場から離れろ、そして今あったことは誰にも何も言うな。それが出来るならお前は生かしてやる、だがもし漏らしたとしたなら・・・お前はそこの屍の仲間入りをすることになるぞ」
「ヒィッ・・・分かりました、何も言いませんすぐ消えます・・・!」
恐怖に満ちた様子の男にその人物は脅しと共に迫力のある声をかける、黙って消えろと。男は更に恐怖に震えながらも何とか分かったと言いながら、その場を逃げるように去っていく。
「・・・ご苦労様、センセイ」
「・・・一先ずはこれで終いか」
「今のとこ入ってきた情報じゃあね」
それで入れ替わるように場に来たノワールに人物・・・比古清十郎は確認を取ると、今のところと返す。










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