時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

「本来の預言という物は世界への危機を訴えた物であった・・・それが歴史の流れで本当の意味を見失ってしまったことはユリアにとっても無念であったことだろう。だが今ならまだ出来るのだ、滅びを回避する事は!・・・そしてかつての大詠師モースのように預言の意味を見失い、ただそれが達成すべきことだと盲信してはいけない。事実現在のナタリア殿下はその生を歪められ王女となることを強制させられ、本当のナタリア殿下に至っては墓さえ作ってももらえずまともに弔われる事すらなかった・・・今のダアトにはそのような人物はいないと聞き及んでいる、そのような人物をこれから出さないと言う誓いを立てた事も。だがだからこそ必要になる、預言を無闇に信じて推し進めることのない時代が!・・・今ここで宣言しよう!我らキムラスカとマルクトとダアトはその名の元にユリアの本当の願いに従い、世界を守るために外殻大地の降下を行うという事を!そして預言が詠めなくなろうともプラネットストームを止めて、悠久の平和を自分達の手で作る為に動くという事を!」
‘‘‘‘!!・・・’’’’
そしてピオニーは流れに乗ってそのままに皇帝の威厳を伴わせた口調で預言の真の意味とモースの盲信から来る行動を引き合いに出した上で宣言した、外郭大地の降下にプラネットストームの停止をすると三国の連名で行うと。群衆は驚きの表情を浮かべザワザワとしだすが、自然とそこには反発の言葉が出てくる様子はない。むしろ納得の声がチラホラ聞こえてくる・・・やはりピオニーの話はあまりにも現実味があり真実味を帯びていて、変に意地だけで反対することも出来ないのだろう。預言にどっぷり浸り、益しかないと考えていた者達でも。
「・・・すまないが、少し静かにしてくれ!・・・この決定はつい先程、代表のアスターの屋敷で決まったことだ。細かい政策に関しては各々が国に戻った後で決めることになるだろう、それはまだこちらも国に戻らねばどうしようもない・・・だがこれだけは約束しよう。もしプラネットストームが止まり預言が無くなっても、つつがない政治を行うことを!」
‘‘‘‘!・・・ワアァァァ・・・!’’’’
ピオニーはその様子に大きく声を出した後、皇帝の顔というよりは一人の人間として優しく語りかけるように自身の意志を笑みを持って告げ、群衆はその姿を見て一気に沸き立った・・・不安が少なからずあったのだろう、預言が無くなった後の事を。だが威厳という高圧的ではなく笑顔という親しみのある姿を相当なギャップで見せられた事で、多大な幸福感を得られたようだ。


















・・・その後その一体感を退散の時期と見たピオニーはインゴベルトとトリトハイムに共に投げ掛けた上で領事館に戻ると告げ、後をアスターに任せて各々兵士達に守られながらその場を後にしていった。



「・・・お疲れ様でした、ピオニー陛下」
「あぁ・・・久しぶりにあんな仰々しい事をしたからな、確かに少し疲れた」
・・・それで領事館に入り近くにあったソファーを見つけるや否や、どかりと座って身を預けるピオニー。ジェイドが気遣いの言葉を向けるとピオニーは手を顔に当て本音の声で返す。
「まぁ成果はこれ程にないくらいに上々だ。後はグランコクマに帰ってプラネットストームをお前達に止めてもらえばそれで障気の驚異は無くなる。ただそうするからにはこれからの俺達がちゃんと民達を導かないといけないから、頑張らないとな・・・!」
「・・・陛下・・・」
だがその手をどけて決意に満ちた瞳を浮かべたピオニーの言葉に、ジェイドは少し物惜しげな瞳を隠しながら浮かべていた・・・もうこの旅が終わればピオニーのこれからを見ることが出来ない、そう言った想いが見える瞳を・・・







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