時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

・・・おそらくだがダアトに渡すことになるケセドニアからの献金は今のままでは、どう多く見積もった所で半分近くは無くなる可能性は高い。少なくともピオニーはそう見ている。

まず大前提として言うなら預言がないローレライ教団と神託の盾に人が集まるなど想像がつかない、むしろ人が離れていく光景が容易に目に浮かぶ・・・そうなれば世界に広がる教団の活動の活動規模も人員の関係で狭まるのは避けられず、活動資金も必然的に大幅に余ることは避けられなくなるだろう。

ただその金を着服しようとするために色々誤魔化す者も出てくるかもしれないが、それもいずれは教団の規模の縮小に伴い莫大な運営費がいらなくなる事は避けられない。内部からそう言った声が出るのもだが、献金をしているケセドニアという外から声が出るのは避けられない。むしろそこまでの状況になればケセドニアとダアトの立場は逆になり、下手に出ざるを得なくなる・・・預言という強みが無くなった以上、ケセドニアにローレライ教団が強く出られる材料はないのだ。

そして金という強みはケセドニアをどこまでも強くする、弱い立場になったダアトに対し。



(導師も温情に訴えかけはするだろうが、アスターに足元を見られる事態になるのは避けられんだろう。その過程の上で献金の額は間違いなく下がる・・・その分こちらは得をするけどな)
・・・ピオニーから言わせてもらえばケセドニアを通して流通される物資の関税が下がるのは、皇帝という立場からすれば喜んで迎え入れられる出来事である。当然だろう、関税が下がった分の金額をある程度分上回らせて物資を売りに出せて同時に相手側に入る実入りは大きいとは言え以前よりは安い物資を手に入れれるのだから。
しかしダアトの損になることがほぼ確定なことを知っていてそれを見捨てるような事をするのは、ひとえにピオニーがマルクトの皇帝であるからだ。



・・・もしそのようになったなら、ダアトが危機に陥るのは避けられない事態になるだろう。何せ金が手に入らなくなるのだ、ローレライ教団の維持は難しくなるだろう。

そしてそうなった場合ダアトが何か画期的なアイディアがない限り、財政危機に陥るのは避けられない・・・一応は信者からの寄付金も教団の運営費ではあるのだが、その信者も大幅に減るのが予測はついている。その事からうまく行く可能性も低いというのも予測がつく。

・・・そんな時にダアトが助けを求めるとしたなら、必然的にキムラスカかマルクトの二国になるだろう。ケセドニアからの献金はもはや期待は出来ない上に、信者からの寄付金も期待出来ないのだから。

だがその時にはキムラスカかマルクト、どちらを頼るにせよダアトは一個の国として見られていたその領土の自治権を放棄する事を余儀なくされるのは間違いない・・・何故と言われればローレライ教団にはもう預言という旨味は存在しないのだ、その時には。どちらを頼るにせよ、助けを求めた場合に求められる代償として出せる代償はその領土くらいしかない・・・



(うまくいくならそれでこちらは構わん、預言の後始末にそれからの教団運営をうまく出来るならな。まぁダメだった場合こちらから助け船を出すつもりではある。その領土をマルクトの統治下にすることを条件にな・・・ただどうなるにせよ、これからダアトをどうするかは導師次第だ。これ以上は口出しはせんぞ、変に他の奴に勘ぐられるのもだが導師には導師らしく動いてもらいたいからな)
・・・皇帝としての思惑、個人としての思考。国を思いつつも自身の考えに合わせた上で結論を出した。イオンの行動をどうであろうとも受け入れ、それに合わせた対応をすると。



これからのダアトを呑み込むか迎合するか、それが故にピオニーはイオンに何も言わぬと決めたのだ。以前と変わったイオンだからこそ、チャンスを与える形として・・・








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