時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

・・・そしてマルクト側の領事館にピオニー達は戻った。



「・・・アスターはこの問題を真剣に考えてくれているようですね、それもこちら側に寄る形で・・・」
「・・・どうだろうな」
「・・・え?」
それで領事館に入って一息ついた所でイオンがアスターの言動を喜ばしいと言った様子で微笑むが、ピオニーの声に何をと眉を寄せる。
「確かに導師の言うようアスターはどちらかと言えばこちら側に寄った立ち位置だろう。だがそれはあくまで結果としてこちらに寄ることが得られる旨味が大きいというのがある」
「旨味・・・?」
「奴はケセドニアをまとめる代表だが同時に商人としての観点で先程の会談に望んでいた・・・奴からすれば外殻大地の降下にプラネットストームの停止は命あっての物種、故に賛同した点が大きいだろう。だがそれに相まって奴はこうも考えている可能性がある、預言が無くなればダアトがケセドニアに関わる余地が無くなり更なる利益を得られると」
「えっ!?そんな、アスターがそんなこと・・・」
「可能性が無いわけではない、という事だ」
それでピオニーが可能性として提示したのはダアトがケセドニアに関われなくなるのでは、という物。そう聞かされイオンが信じられずに声を上げ、ピオニーはあくまでと告げた上で続ける。
「このケセドニアという場所はマルクトとキムラスカの流通を滞りなく進める為、ローレライ教団が二国に流通の拠点にするようにと言って発展に協力したことでアスターの手腕もあるのだろうが大きくなった。それがこの街の大まかな発展の歴史になる・・・それは分かるな?」
「はい・・・」
「それでこれもケセドニアが発展してきた大きな理由の一つだが、ローレライ教団に対し莫大な献金をする代わりにその名を持って自治区として両国に襲われないようにしたということもある。ケセドニアという場所は両国にとって国境にあるということもあり、重要な拠点になっただろうからな。そう言った点ではダアトの名は献金をするだけの価値はあったと言えるだろう、何せ流通が滞りなく進めば安全と金が手に入るのだからな・・・だがそれもローレライ教団が預言という存在の意味を無くし、キムラスカとマルクトが争うような事が無くなればケセドニアはローレライ教団を頼る意味はあると言えるか?預言による戦争及び滅び、それを避ける為に両国が大人しくなるだろう時にだ」
「っ!・・・いえ、ありません・・・」
「・・・わかってもらえたようだな」
それでケセドニアの歴史に在り方を話した上でこれから訪れるだろう現実的な未来を添えてピオニーがどうかと問えば、イオンはその可能性に気付き蒼白の顔色で顔を少し下げ首を横に振る。
「商人としての観点で見るとダアトに差し出すための献金がないなら、それだけキムラスカとマルクトにかける関税の金額を下げることも可能になる。そうなれば当然キムラスカにマルクトも高く物資を売り込む事が出来、同時に安く物資を買い込むことが出来る。そしてケセドニアは更に金が舞い込み、更なる発展が見込める・・・という訳だ。まぁこれはあくまで俺の仮定に過ぎんがな。そうするとも限らないし、そうしないとも限らない」
「・・・ですがもしそうしたとしたら、どうすれば・・・」
「・・・そうなったとしたなら、俺の立ち入れる領域ではない。俺と導師はマルクトとダアトで、立場が違うからな。だがどうなるにせよダアトの改革は必要になるだろう、何せ預言が詠め無くなるんだ。今までのダアトのように動かすことは出来なくなるだろうからな」
「・・・そう、ですね・・・」
それで尚もアスターの取る可能性のある行動を現実味のある推測で告げれば、イオンは不安そうにピオニーを見つめながらどうすればいいか問いかける。だがそこでピオニーがそこからはそちら次第と返したことで、重くうつむいて精一杯の納得の返答を返した。
(・・・とりあえずは俺から言えるのはここまでだな)
その様子に自身の中でピオニーはストップをかける、それ以上の言葉をイオンにかけることを。







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