時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

「・・・その反応では貴殿らは大詠師から話を聞いてなかったようだな、ナタリア殿下の事は」
「は、はい・・・まさか、その様なことを大詠師がしていたなどとは・・・」
「・・・それが、預言のみを大事として盲目に事を進めてきた者達の起こしてきた事だ。そしてそれは全体の一端でもある」
そんな姿にピオニーが知らなかっただろうという事を強調すれば、流石にインゴベルトから否定出来ない材料を提示されたのもありトリトハイムを始めとして一斉に詠師陣の表情が暗くなる。そんな姿にピオニーは続ける、預言を詠み続けることによる危険を。
「今までの風潮では預言は守られるべきという見方をされてきただろう・・・だが深く掘り下げれば掘り下げるほどに出てくるのはなんだ?故あれば預言を実行するために身内までたばかり、故あれば大きな預言を実行するために小さな預言を利用し他国をたばかる・・・本来の預言の意味とは災いが詠まれていたならそれを避けるように伝え、福が詠まれていたならそれを伝える。そういった物ではなかったのか?」
「そ、それは・・・確かに、そうです・・・」
「そうだろう。だがそのように思う貴殿らと違い、大詠師を始めとする預言を盲目に信じてきた者達は推し進めてきた。預言をただ実行することをな・・・そしてその預言を実行してきた結果が、ホド戦争を始めとする到底人道に基づいた物とは言えん物だ。国の資材もさることながら、人的資材もな・・・無論、今までの歴史の積み重ね及び様々な犠牲の上でこの世界が形を成している事は俺は忘れてはいない。だがそれらの影で動いてきたものがいる、それがヴァン達だ」
「!ヴァン、達・・・」
いかに預言がはき違えられて捕らえられたか。そう盛大に語った後でピオニーから問いかけを向けられトリトハイムが言いにくそうに肯定する中で、更に預言の功罪を語った上でヴァンの名を出し緊迫した空気を出させる。
「そもそもの話からヴァン達が何故行動を起こしていたのか、と言うことだがそれはシンク殿から聞いた。詳しく説明するには多少時間がかかるから端的に言うが、話によればヴァンはホドの出身で預言だからとホドを消滅させられたことから預言を憎むようになり、似たような身の上の者であったり使える人材を集めていたとのことだ。預言を覆す為にな・・・分かるか?預言に詠まれた繁栄の裏には犠牲者は確かに存在していた。それもその人々を黙殺する形でだ。そうなれば恨み辛みを持つのも当然と言えよう」
「・・・そんな犠牲者を出さない為にも、これからは預言を見直さねばならない・・・いや、そもそもからを言えばこのままプラネットストームが動いている事自体がまずい可能性もありますし・・・障気によって世界が滅びる可能性が・・・」
それでヴァン達の身の上を説明して恨みは当然だとピオニーが言うと、事態を重く受け止めざるを得なかったようでトリトハイム達はブツブツと預言に対し真剣に考え出す。流石に盲目的だと言葉に出され続けた上にヴァン達という実例、更には第七譜石の中身を受け目を反らすことは許されないと感じたのだろう。その表情は危機感に満ちていた。



・・・最も、この場にモースがいたなら第七譜石の預言は偽物だとけして認めはしようとしなかっただろう。例えローレライの存在があろうとも、科学的根拠があろうとも。その分トリトハイム達は物事の真贋を聞き分ける程度には冷静で、預言に傾倒しきっていた訳ではないようだ。










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