時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

「・・・・・・今まで預言の恩恵により国は発展してきた、それは否定出来ん。だがそれが今明らかとなった事実では全て、滅びの為などと・・・すぐには私は信じられん・・・」
「成程、事実をすぐには受け入れられないという訳ですか」
「・・・正直な所で言えばな」
それでインゴベルトはようやく質問に答えたかと思えば、すぐには信じられないと言う単純な答えを絞り出して出したことにアスターもその意を素直に受け取る。
「・・・まぁそれは確かにそうだろう。だがかつてのホドの戦争で貴殿らは何を得た?」
「ホド・・・っ!」
「そう、ホドだ。かつてのホドでキムラスカとマルクトは対峙した。その結果我らはホドを失い、貴殿らは元々の目的のホドを攻めとる事も出来ずただ兵に資源を失った・・・預言など関係無く考えてもらいたいのだが、あの戦争で何を得た?貴殿らは?」
「「・・・っ!」」
そこに今度はピオニーがホドについて話題を上げるとファブレ公爵が苦い顔をする中、更に話を続け預言の関係無い実益があっかと問い掛けるとインゴベルトも同様に反応し苦い顔になる・・・それもそうだろう。ホド戦争で得られた物はキムラスカもマルクトも全くなく、むしろあまりにも多く色々失った物ばかりだ。キムラスカの実権を持つ二人からすれば、それは目を背けねばあまりにも損失が大きい物だろう・・・だがそれでもそれを黙認せねばならなかった理由は一つ・・・
「・・・貴殿らも気付いているだろう、それが預言に詠まれた物だからこそやったことだと黙認していたという事を。そしてそれは預言を重視するあまり、預言を達成することだけを目的とする者達がただ盲目的に進めていた事にも起因しているという事を」
「「・・・っ!」」
・・・そう、預言だ。
改めて突き付けられるピオニーからの事実に二人の顔が更に苦み走った物へと変わるが、それに反応してトリトハイムの顔が不快そうな物へと変わる。
「それは、どういう意味でしょうか・・・?」
「・・・あらかじめ先に言っておこう、俺は導師や貴殿らの事を言っているのではない。俺が言っているのはかつての大詠師モースを始めとした、キムラスカに戦争を詠まれた預言を提供した者達の事だ・・・そしてその大詠師はこちらにもだが、キムラスカに対しても重大な反旗を翻していた」
「えっ・・・?」
「「・・・っ!」」
それで抗議の声を上げるトリトハイムだが前置きを置いた上でモース達の事を言い、かつキムラスカにも行動を起こしていたとピオニーから言われ戸惑いに声を変える。そしてその中身にインゴベルトとファブレ公爵の目がまさかと言った様子で目を見開き、ピオニーに向けられた。
「・・・これはインゴベルト陛下にファブレ公爵のみが知らされた事だと俺は聞いているが、ナタリア殿下・・・彼女は預言により本当は死産だったナタリア殿下の代わりとして入れ換えられた仮初めの王女、とのことだ」
「なっ!?そ、それは本当なのですか!?」
「・・・嘘、ではない。現にモースは死ぬ前にバチカルにいた時、私にその事実を本物のナタリアが埋葬された場所という証拠と共に上げてきた・・・それも勝手にルーク達に付いていったナタリアをアクゼリュス行きから連れ戻すのを諦めさせる為に事実を明かす、という形でだ」
「「「「・・・っ!」」」」
それで手札としてピオニーが明かしたのは、ナタリアが偽物だという事実。その爆弾とも言える事実にインゴベルト達も知っていたという事からピオニーではなくインゴベルトに確認をトリトハイムが慌てて取れば、事前のバチカルで事実を告げると聞いてたのもあり神妙に肯定を返した。その瞬間、ダアト陣の表情が一斉に戸惑いと驚きが入り交じった物になり停止する。






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