時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

『我は不覚にも地核にいることになってから二千年近くになるが、様々な偶然が重なったことにより我は地核より出ることが出来た・・・それでこちら側に座っている者達の行動を受け、我は今ならと思い授けたのだ。第七譜石、いや預言が詠まれるようになった真の意味を受け止めてくれると思ってな』
「預言が詠まれるようになった真の意味・・・?」
それでローレライが話を預言の意味に移行したが、その声にトリトハイムが何を不安と興味の入り交じった瞳を向ける。
『そもそも預言とは最後に詠まれたこの第七譜石の中身を白日の元に晒し、滅びの結末を是が非でも避けるために詠まれた物・・・しかしその詠まれた中身が中身だけに一回で滅びまで全てを詠めるようなサイズにはならず、第一から第七までその譜石が分かれることになった。それが譜石が世界各地に分かたれる一因になり、惑星預言の真の意味を隠す一因になってしまった・・・嘆かわしい事だ・・・』
「・・・そんな・・・」
そして語られる滅びを避けてほしかったからこそ預言が産まれたとの経緯を語るローレライだが、トリトハイムを始めとしてキムラスカとダアト側の人間は下手に何を言うことも出来なかった。その声があまりにも切実で悲痛な想いがこもっていて、否定を返すにもその想いに見合っただけの想いが返せないが故に。
「・・・さて、今までの話からこの第七譜石が本物であり先程詠まれた預言が嘘ではないとお分かりだろう」
「「「「・・・」」」」
その中でピオニーが上げた確認の声に、誰一人反論を返すことが出来ずに視線を反らす。
「これらの話を踏まえた上で言いたいことはまず、我々は戦争をするべきではないということだ。外殻大地降下の件に関して主戦場と見られるパダン平原が魔界に堕ちれば両者の間で戦争など成り立たなくなる上に、もし我々が負け預言通りになったとしたらどのように貴殿らは責任を取るというのだ?世界が滅ぶ程の事態を招いた時のその責任を」
「「「「!」」」」
「いや、責任が取れる事態にまで押し込めたならまだいいかもしれん。下手をすればそれこそ障気によって世界が壊滅しかねんのだ。そのような状態では責任など存在もしないだろう、何せ人が存在していないのだからな」
「「「「・・・っ・・・」」」」
更に続けられた預言の中身を踏襲した上での問いかけを向けられキムラスカとダアト側は一同恐れおののくが、だめ押しのように預言に詠まれた結末の世界には誰もいないのだとピオニーから聞かされ何も答えを返せず力なく息を呑んだ・・・流石に預言通りにした未来の先が絶望しかないとなれば、考えなしに発言する事は出来なかったのだろう。自分達ももしや無惨な最期になってしまうのではないか、そうなってしまうことへの恐れから。
「・・・イヒヒ、皆様方。そのように悩まれるのは何故でしょうか?」
「アスター・・・」
「差し出がましい事を言うようですが、インゴベルト陛下。ちゃんとした研究の上、預言にすらも滅びの道筋ははっきりと出ているのです。今までの話を聞いたなら早目に外殻大地の降下をして然るべきと私は思っているのですが、どうして迷われているのでしょうか?」
「む、むぅ・・・」
するとその中で一人冷静だったアスターの発言がインゴベルトに向けられるが、ドライでいて妥当な判断からの疑問の声に顔を背けて悩みの声を上げる。








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