時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

「・・・ま、まさかヴァン達がそのようなことをしていたなど・・・」
「・・・それも、ですが・・・我々はその預言の事に加え、大詠師が預言を知っていてキムラスカに渡りをつけていたと言うのも、今となっては見過ごすことが出来ぬのですが・・・」
「うっ・・・」
・・・そして一先ずと区切られた話の折り目に愕然とした様子を浮かべるインゴベルトだったが、ダアト陣の代表と言えるトリトハイムから何も知らされていないと言った視線を向けられすぐに言葉を失う・・・おそらくインゴベルトを始めとしたキムラスカ勢はダアトとの滞りのない連携を期待してこの場に臨んだのだろうが、所詮寄せ集めな上にモースにキムラスカに預言の事実を知らされていなかったダアトが急にうまくやるなどというのは話がうますぎると言えた。
「済まないが、こちらの話はまだ終わっていない・・・続けてよろしいか?」
「う、うむ・・・」
明らかにガタガタなその姿にピオニーが話を続けると確認の声を向ければ、インゴベルトは動揺のままに頷く。
「ヴァンやアクゼリュス消滅の預言の件についてはまた後でいい、今は目前の問題として外殻大地を降下することの是非について話させてもらう」
「外殻大地の降下の是非・・・」
「あぁ。ヴァン達の調べ及びホドの崩落、そしてアクゼリュスの自然崩壊・・・それらの流れから導き出されるのは1つ、遠くない内での全ての外殻大地の崩壊だ」
「「「「なっ!?」」」」
それで話を始めるピオニーは外殻大地の事について切り出し、それがいかに重要かをかいつまんで説明してキムラスカとダアトの者達を絶句させる。
「ピオニー陛下・・・それは、真なのですか?」
「あぁ・・・調べによればホドとアクゼリュスに挟まれる形で存在するシュレーの丘のパッセージリングがそう遠くない内に何もせずとも崩壊するらしい」
「何っ!?そんなことが有り得るのですか・・・!?」
「セフィロトというのはパッセージリングにおいても重要な役割を持っている、何せ外殻大地が浮いていられるのは音素の恩恵によるものだからな。それでセフィロトは通称で星のツボと呼ばれる程に音素が集まる場所で各地に点在しているが、そういう造りになったのはこの外殻大地を音素によって持ち上げる為でもある。そしてリングという形状の性質上両端が無くなったシュレーの丘のパッセージリングは音素による浮力を保ち続けることは出来なくなる、何せリングによって流れていた音素が供給されなくなるんだからな・・・それでシュレーの丘近辺の大地はしばらくすればホドやアクゼリュスと同じく魔界に崩落して墜ちる、規模で言えばカイツールを含めて広範囲になるとの調べがついてるとの事だ」
「「「「・・・っ!」」」」
その中で一人冷静にアスターが真偽を問うとピオニーは淡々とまずシュレーの丘のパッセージリングが壊れると告げ、トリトハイムが信じられないと声を上げる中でそうなるに至る確かな理由及びその範囲をまたピオニーが淡々と告げた事で両陣の驚愕の色が更に強まる。
「そしてそうなれば更に崩落の煽りを受け、他の外殻大地も同じように崩れていくのは目に見えている。後はなし崩しに一つ一つ崩れるだけだ、このまま外殻大地を浮かせ続けさせたならな」
「そ、そんな・・・」
「で、ですが外殻大地を魔界に降ろせば障気に大地が呑まれ、人々は死んでしまいます・・・そうなってしまったら・・・」
「問題ない、解決策はある」
更に話を続け外殻大地は段階を踏んで壊れるだけと言うとインゴベルトは絶望すら表情に映しかけ、トリトハイムはそれで魔界にすぐに降ろした所で死ぬだけと顔を青くして訴えるが、ピオニーの表情は揺らがずただ真剣に両者を見据える。






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