時代と焔の守り手は龍の剣 第二十一話

「言葉を隠さず言ってしまうならあの方に残る道はそう多くありません。ダアトに戻るなら導師としての力量を見せないと今までのよう、導師として祭り上げられ続ける可能性は極めて低いと見られます。良くて発言権を奪われた状態の傀儡になる、悪ければその存在自体抹消されかねません。あの方はレプリカの身の上に加えダアトという我々の手の及ばない場所にいますから、そのようなことはしないように我々が脅しをかけてもいくらでも誤魔化しはききます・・・まぁこれは未来の話ですが、現状でも今のイオン様をダアトの上層部がすんなりと受け入れるとは思えません」
「・・・レプリカだから、か」
「それもありますし、あの方の見通しの甘さもあります。このまま行けばいくらイオン様に協力を申し出ても、イオン様が感情論で物を言えば言うほどダアトの心は離れていくでしょうね。何もわかっていない子供の戯言など聞く価値もないと・・・そしてそうなればプラネットストームを止める事に対しての話し合いも難航を極めると推測されます」
そこから出てくるのはイオンに対しての不信及び、取るだろう行動の予測からの拭いきれない不安・・・ジェイドからの否定出来ない推測にルークが表情を暗くする中、ジェイドは眼鏡を手で押さえる。
「・・・ですがだからといってここでダアトよりの反発を招く訳にはいきません、そうなればキムラスカも我が意を得たりと同調しかねませんからね・・・ですから私はグランコクマに戻ったなら、ティアにアニスの事を引き合いに出した上でこちらに流れを引き寄せるべきだと陛下に進言しようと考えています」
「!?二人を利用する、のか・・・!?」
「はい。ティアに関して言うならダアトとキムラスカでの連携を絶つ為に、アニスはダアト内でモースの引き起こした出来事の暴露に加えてマルクトに下手に逆らえないアドバンテージを得る為にです。ティアは元々キムラスカに対し大分粗相をしていたのをモースが無理矢理にアクゼリュス行きで片付けようとしていたのをその存在が今はグランコクマにあると蒸し返せば十分に二者間での気まずさを引き出せますし、アニスに関してはマルクトがやられた事は言うに及ばずダアト内での不正の証拠もこちらの手にありますからね・・・二人をうまく使えばマルクト主導の元、うまく場を制する事が出来ると思いますよ」
「・・・そこまで考えてたのか、お前・・・」
・・・死霊使いの真髄ここに極まれり、といった所だろう。壮大にティアとアニスを使ったキムラスカとダアトの両者を手玉に取るその策謀の詳細に、ルークは唖然といった様子でジェイドの顔を凝視しか出来ない。
「形振り構っていられるほど、この状況は甘い物ではありませんからね・・・使える物は使っていかなければいけません。状況が一転すれば不利になるのは第七音素を無くそうとしている我々マルクトなのですから」
「あ・・・そういやそうだったな・・・」
だがその策謀も切羽詰まった現状だから出したのだととジェイドが正直に言えば、ルークもすぐにそのことに気付いて気まずそうに頭をかく・・・今マルクトは圧倒的優位かと思われがちだが、今やっていることは最高以外は許されない事なのだ。外郭大地の降下が出来れば第七音素を無くさなくてもいいなんて妥協なんて有り得ない。そう考えれば不安要素は一つ一つ取り除くに限るし、ジェイドがその事に細心の注意を払って心を砕く苦労は計り知れない・・・故にやり過ぎだなどと言うことは出来なかった、ルークには。










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