時代と焔の守り手は龍の剣 第三話

「これは・・・?」
セカンはラルゴの腰のポケット辺りからこぼれ落ちたであろう鉄の塊を見つけ、拾い上げる。
「なんだろう、これ・・・普通の物じゃない。多分何かに使えそうな気はするけど、何の為に使うんだろう・・・?この人、ラルゴが持っていた物だから何か制圧に関係するものかな・・・?」
その塊を角度を変えつつ眺めていき、セカンは悶絶して気を失っているラルゴを見る。
「・・・このままラルゴを放っておいたら神託の盾に治療されて、私達の情報が向こうに渡されるかもしれない。今のうちに、ラルゴに止めを刺さないと・・・」
だがラルゴを見てセカンはまだラルゴが死んでないことを思い出し、その塊を懐に自然に納めながらもその手で刀に手をかけ完璧な止めをさそうとする。
「おい、セカン。何してんだよ、早くこねーとおいてくぞ」
「あっ・・・・・・はい、今行きます」
その瞬間戻ってきたルークがセカンに声をかけ、セカンはルークとラルゴを交互に視線だけ送って見て何事もなかったかのようにルークの元に走り出す。
(流石にルークさんに人が死ぬ瞬間を見せるのは酷だと思う・・・後はラルゴ次第だけど、出来れば後々の事を考えたら死んでいて欲しい・・・)
セカンが来る様子を見て先に行ったジェイド達を追い掛けるルークの後ろ姿を見ながらセカンは自身の気遣いと、通常では残酷で戦場ではむしろ当然の考えを浮かべ最後尾を走る。






「さて、これからですがまずはブリッジを奪還します」
・・・そしてタルタロスの階段を上り甲板上に出た四人。ジェイドは早速と言わんばかりにまずはタルタロスのブリッジを取り返すと言い出す。
「・・・でしたら、私は囮になります」
「・・・セカン?」
タルタロスを取り返す自信を覗かせるジェイドの言葉に、セカンは自身の考えを提案に出しルークの疑問の視線をもらう。
「囮、とは?」
「言葉通りです。タルタロスにおいて艦本体を動かせるブリッジは戦略的に見て敵が最も欲しく、同時に、タルタロスを占拠したなら一番奪われたくない場所でもあります。そんな場所に兵士を多く置かないなんてことはまずありません。だから私はそのブリッジにいる兵士の目を引き付ける為に、囮になると言ったんです」
「ほう・・・ですが囮というからには当然、敵の目の多数が貴女に来ることになります。先程ラルゴを倒した貴女の手腕を疑う訳ではありませんが、何か勝算でもあるのですか?」
囮という言葉にジェイドも訝しい視線を向けるが、セカンは囮の重要性を強く説く。しかしジェイドは慢心を戒めるというにはあまりにも意地が悪い、死にに行くのかと遠回しに皮肉った疑問をセカンに投げる。
「ええ、このタルタロスを襲ったのは神託の盾ですが周りには見れば分かると思いますがグリフィンの群れもいます。だからそのグリフィンをまず、戦闘が不可能な状態にします」
「何を・・・?」
だがその皮肉を真っ向から切って返すセカンに、ジェイドは疑問の目を向けて来る。
「あそこのグリフィンを見ていて下さい、証拠を見せます」
‘ツ~~’
「「「?」」」
するとセカンはちょうど上の空を飛び回るグリフィンを指差し、刀を抜く。何が起きるのかわからない三人はただセカンのやることを何事かと見るばかり。
「いきます・・・」



「飛天御剣流・龍鳴閃」



‘キィィィィンッ!’
‘‘‘‘ギャアッ!?・・・ドサドサッ’’’’
「「「!?」」」
技の名を誰にも聞こえない音量で呟いたその一瞬、セカンが凄まじい速さで刀を鞘に納めた、超高音の鍔鳴りの音を伴い。そして次の瞬間グリフィンは苦しみの声を上げのけ反ったかと思えば上空のグリフィンだけでなく、周りを飛んでいたグリフィンまでもが気を失って地面に力無く落ちていく。その光景を見たジェイドを含む三人は、ただ驚愕して目を見開いた。
「・・・すげぇ。今何をやったんだ、セカン?」
そんな中最初に気を取り直したルークが、今の現象の説明を求めて来る。
「動物というのは魔物も含めて、私達人間よりも総じて鋭い五感を持っている事が多いです。それで聞きますがルークさん、今の音を聞いてルークさんは耳が痛くなるなどそういった事は起きましたか?」
「あ、いや。そんなことはなかったけど・・・」
「普通の人の耳ならこのくらいの距離で今の音を聞いてもなんにもなりません。ですが動物は聴覚は人より何千倍優れているモノもいます。そんな聴覚で今の何千倍物の音を耳で聞いたなら・・・まず、意識を保つ事は出来ません。耳が良すぎるから彼らは今の音を聞いて我慢することも出来ずに倒れたんです」
「はぁぁ・・・成程な・・・」
龍鳴閃の効果と魔物の感覚の鋭さ、二つを合わせた説明にルークは感嘆しながら納得する。






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