時代と焔の守り手は龍の剣 第三話

「セカンの言っている事は確かにわかります。ですがここで神託の盾からタルタロスを取り返すには今しかないのも事実です。何せ占領されてしまったらそれこそイオン様を取り戻す事もですが、このタルタロスを取り返す事も非常に難しくなります。だから占領されきってない今しか、私達がタルタロスを取り戻す機会はないのです」
「・・・っ!」
必死なルークの言葉に返すジェイドの言葉は一応理にかなった理詰め、のように聞こえる。だがセカンはその並べられた言葉に、信じられないと目を見開き絶句をしていた。
「それに、タルタロスを取り返す事は十分可能です。私に加えてセカン、それにティアと貴方の助けがあればね」
「・・・っ!」
更に続いた言葉に、セカンは更なる絶句に陥りたまらず声を上げそうになる。だがその声を納め、見開いた目も必死に普通に元に戻す。
(どうして・・・!?このタルタロスを巡る攻防は明らかにマルクトの負けで終るだろうって言ってるのに、なんでそんな大量の敵しかいない場所で自身満々にタルタロスを取り返すなんて言えるの!?それに敗戦が決まった戦は被害を少なくするために撤退をするのが常道のはずなのに、ジェイドさんはまだ負けたって感じてる様子が見えない・・・いくらタルタロスがマルクト所有の物で何か手があるって言っても、過信し過ぎだと思う・・・それにこう言った非常時だったら尚更民間人を守る事を考えなきゃいけないはずなのに、この人は私達全員を戦力として見てる・・・何なの、この人・・・!?)
セカンは絶句した理由を内心で全力で疑問の声を出す。実際に声にしないのはジェイドといらぬ口論を避ける為だ。



・・・古くからの戦術書によれば負け戦になる時は無駄に戦い続けるより、潔く撤退を選ぶ方が懸命とされる。劣勢を装ったなんらかの策ならいいだろうが、今の状況は明らかに策などではない。一歩所か何歩も出遅れている現状で、この四人で大量の神託の盾を相手取るのは懸命などではない。逆に無謀としか言いようがないだろう。

それにジェイドがセカンの言うよう何らかの手を持っていたとしても、今の人員ではどんなに好手でも悪手に成り兼ねない。せめてまだ数十単位の人間が生きていればその手も活かせるだろうが、やはり人員の数の差は覆せない。

・・・そしてなんと言ってもセカンが一番気にしたのは、その自分に協力することは当たり前だろうと言わんばかりの態度だ。



「そう考えたなら、あまりぐずぐずしている暇がないのもわかるでしょう。では行きましょう、三人共」
「はい」
「「・・・」」
そして自分の言いたい事を言い終えるとまるで自分の話したこと、それが決定項であるかのようにさっさと話を進めて先に行くジェイドに肯定を返して後についていくティア。その二人が先に行く姿の後ろには納得など到底出来ない様子のセカンと、一方的に物を言われ不安そうで不機嫌そうな顔のルーク。
「・・・んだよ、まるで自分のやることの方が安全みたいな言い方しやがって。セカンの言ってたように逃げた方が安全に思えるのに・・・くそっ」
そっと愚痴を力無く呟きながらも、ルークは従うしかないと考えたようで渋々と二人の後を追う。
「ルークさん・・・」
その後ろ姿を見て、セカンはたまらず心配そうに声を上げる。
(ルークさんは揺れてる、この状況に。全く経験もしたことのない状況に置かされて・・・私だけならここから逃げる事も出来るけど、そうしたらジェイドさんの意見に強制されてルークさんは辛い状況になる。だったらせめて私がルークさんの助けになれるように、しばらくでもいいから側にいないと・・・!)
そう声を上げつつ、セカンは自分の感情に従い内心でルークを助けようと決心をする・・・自分のやるべきことと関係ない事だと、心の片隅で感じながら。
「・・・よし、行こう・・・ん?」
そうと決まったら後を追おうとセカンも足を運ぼうとする。だがそんなセカンは倒れ込んだラルゴの方をふと注目する。







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