時代と焔の守り手は龍の剣 第十九話

『そうだ。重ね重ね誓って言うが我は変に地上に関わる気はない上、これ以上預言が詠まれるような事態など望んではいない。ただ他の意識集合体のように音譜帯に行き新たな帯になりたい・・・それだけのことなのだ』
「・・・預言が詠まれるような事態を望んでいない・・・それは真なのですか、ユリアと共に預言を広めた者として名高い貴方ともあろう方が?」
「いや・・・ローレライの言っている事は本音だ、まず間違いなくな」
「・・・驚きましたね。まさか貴方からそのような言葉を聞けるとは・・・」
そこからローレライは念を押すように偽りない自身の本音と言うが、ジェイドは疑いの視線をただ送るだけ。そんな様子に比古清十郎がローレライを擁護するような言葉をかければ、ジェイドは本気で意外そうに目を大きくさせる。
「・・・俺も少なからず表の歴史に語られない歴史の真実を知る身で、その中にはユリアのこともある。そしてその歴史に照らし合わせた時、ローレライも今のような形で預言が広まることを望んでいなかった・・・俺はそう思ったに過ぎん、それだけだ」
『・・・そうか、そなたは開祖の比古清十郎からユリアの最期の時の事を・・・いや、すまん。信じてくれるならありがたい』
「・・・気にするな、別に礼を言われるようなことではない」
・・・そこで比古清十郎の中で思い返されるのはミュウにだけ話した、歴代の『比古清十郎』から直々に語り継がれてきた口伝によるユリアの真実。だがそれまでは流石に心情的にも言えない為に突っ込まれないようにぼかして話し、ローレライはついその事を言いかけるがすぐに話を変え謝罪し比古清十郎は首を横に振る。
「・・・話を戻してもいいですか?」
「あぁ」
どこか二人の空気になりかけていた場にジェイドが少し複雑そうに口を出せば、あっさりと比古清十郎は頷く。
「ローレライ、貴方が音譜帯に行きたいだけというのは信じましょう。そして預言を詠むような事態を望んでいないということも・・・それを踏まえてお聞きしますが、今も尚世界のどこかで詠まれているであろう預言・・・この預言を詠めないようにすることは可能ですか?」
『何?・・・何故いきなりそんなことを?』
「・・・これから先の事を考えると、預言を詠めないようにすることは必要と考えたからです。そして第七音素を使わないようにプラネットストームを止めるかどうか、を検討することも・・・」
それでジェイドが真剣に切り出したのは預言を詠めないように出来るか、そしてその答え次第で第七音素を使わないようにすると考えているという物。そんなジェイドにローレライは何故と心からの疑問の声を向ける。
『・・・預言を詠む事を止める、か。結論から言うならそれは無理だ。そなたなら分かるだろうが預言を詠むには極端な話、やり方さえ知ればダアトの人間でなくとも第七音譜術士がいれば事足りる。それで第七音素というのは星の記憶が形になったもので、第七音素を扱える素養のあるものがやり方正しく預言を詠めば自然と詠めるようになる代物なのだ第七音素は。故に元を断たん限り預言を詠めなくするなど、我にも出来んのだ』
「・・・成程、そうですか」
それでローレライは少し考え第七音素がなくならない限り自身にも無理と告げ、ジェイドも覚悟していたようで静かに納得の声を上げる。









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