時代と焔の守り手は龍の剣 第十九話

「・・・決断しないといけない、ジェイドの為にも俺の為にも。そしてサフィールは望まんだろうが、サフィールの為にも・・・過去を断ち切らねばな。その為にもジェイドは罰せねばならない、あいつ自身の為にも俺達のけじめの為にもな・・・」
そして責任があると理解しているからこそ、皇帝として責任を取らなければならないと考えている。ピオニーは遠くを眺めるよう寂しげな瞳を浮かべ、いずれ来る時を思い苦しげに呟いた・・・















・・・グランコクマにて各々が様々に悲喜こもごもな様子を浮かべた、ルーク一行。

そんな一幕があった後、グランコクマでの夜が明けルーク達は謁見の間へと再び集められた。



「・・・昨夜はよく休まれたか?まぁそれはともかくとして、早速本題に入ろう」
その姿を見届けた所で玉座に座っていたピオニーが挨拶もそこそこに、話を早速切り出す・・・そこにディストの姿はない。
「ローレライの解放に適した土地についてだが、ジェイドにディストの話では超振動を使う時に補助の音素が付くとは言え何が起こるかわからんとのことだ。ローレライが何をしているのかが正確にはわからない危険性に加え、初めて超振動を使うルーク殿が本当に制御出来るのかがわからない・・・その二点を踏まえてまず人のいない土地で、という事が第一条件になった」
「では第二条件はなんだ?」
「それはルーク殿の負担に加えて地核まで超振動が届くのかどうかと考え、外殻大地上でやるよりは魔界でやった方がいいのではとなった。単純に考え近い方が成功の確率が高くなり、失敗の確率が低くなるだろうとのことだ」
「まぁそれは分からんでもない、だがそうなるとユリアシティでローレライの解放となるが・・・それがいかに厄介事になるか、その危険性を考えていない訳ではないだろう」
それでローレライの解放の場はどこがいいかと話を始めたピオニーに比古清十郎が話の受け答えをするのだが、魔界でやるべきという言葉に鋭く切れるような目でピオニーを見据える。



・・・ローレライという存在はローレライ教団という名にある通り、この世界において相当敬われている。それこそダアトに、ひいてはユリアシティではそれこそ神と言っても差し支えない存在と言ってもいい。それでユリアシティでローレライというその神を降臨させたと知られたなら・・・ローレライを担ぎ出そうとしたり、瞬く間にその事実を世界に広げかねない。そうなれば今のこの状況は場合によっては一気にマルクトに不利になりかねない・・・比古清十郎はそれを示唆しているのだ。



「それについては抜かりはない・・・ディストがユリアシティに置いてあった資料を読んで得た知識で、魔界にはユリアシティ以外に障気にまみれた泥に呑まれなかった土地があるとのことだ。そこを使えばまず見つかりはしないだろう、とディストの言だ」
「障気に呑まれなかった土地、だと?・・・ユリアシティ以外でそんな土地があるとは・・・だが創世歴の技術があったからこそ唯一ユリアシティは今でも形を保っているだけだ。なのにそこも今も残っているとは・・・もしやユリアシティ以上に秘密裏にダアトに協力するものがいる場所なのか、そこは?」
「いや、資料によれば障気に呑まれゆく世界から外郭大地計画が万一駄目だった場合の保険としてレムの塔と呼ばれる塔を作った場所で、外郭大地計画がうまくいったことで忘れられて見捨てられた土地になったらしい。一説には宇宙に飛び立つ為の方舟だとのことだが、結局完成しなかったまま終わったと書いてあったらしい・・・それで考えられるのはそのレムの塔を作った場所であるキュビ半島を基礎から創世歴の技術を持って補強したから、そのキュビ半島は障気に呑まれずに今も半島としての姿が残っているとのことだ。そしてそうやって見捨てられたからこそ、そこに誰かいるはずもない・・・と俺達は見ている」
「成程、必要とされず打ち捨てられた土地か。それなら誰かいることもないだろう、そこを使えば問題はないな」
そんな示唆にピオニーは魔界にキュビ半島という土地がありそこがいかな土地かと説明すれば、始めは疑う声に視線を向けていた比古清十郎も手放しで納得する。










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