時代と焔の守り手は龍の剣 第十九話
「・・・一応聞くが、何故そのような事をすると決めたんだ?」
だがそれでもそう思った訳を聞かなければならないと、ピオニーはその比古清十郎に冷や汗混じりに再度問い掛ける。
「理由は二つある。まず一つはきっかけが変わるとは言え戦争が起きたならマルクトが負けてしまい、預言に詠まれたような結末にならんとも限らんからな。無論キムラスカが負けた場合でも預言に詠まれたような事態が起きる事も有り得ん話ではない。だからそう言った可能性を排除するために手っ取り早く戦争の元を消すのがいいと思っただけだ」
「おいおい、ホントに手っ取り早過ぎだろ・・・」
それで比古清十郎は至って普通に一つ目の理由を語るが、自身の殺害までも普通に語られたのでピオニーは頭に手をかけ参ったと言った様子で視線を背ける。
「二つ目だがどちらかと言えばこっちが本題だ・・・それは世界を一つの国がまとめるなど、土台無理だからだ」
「・・・世界を一つにまとめるのは無理、だと?」
だが続けられた本題という二つ目の中身にピオニーはたまらず比古清十郎を見た、何をと真剣に見つめる形で。
「預言の中身を聞いただろう、お前も。その中で病はマルクトの地より持ち込まれたと言ったはずだ・・・だが考えてもみろ。今まで歴史上で預言に詠まれていたような争いはあくまで隣国を併呑して下し、キムラスカとマルクトが徐々に大きくなっていったといった規模の物でしかない。そして時間をかけて領地を各々の物にしていった訳だが、世界を分ける二国がぶつかりどちらかが消えたなら勝者の国が敗者の国を真に従えるまでどれだけの時間がかかると思う?」
「それは・・・少なくとも一年や二年ではまず無理だな。そもそもからしてキムラスカとマルクトは犬猿の仲で、どっちが勝っても民の侵略した側への負の感情は抑えるのは難しいだろう・・・」
「そうだ。それに預言に詠まれていたのは『要塞の街はうずたかく死体が積まれ、死臭と疫病に包まれる。ここで発生する病は新たなる毒を生み、人々はことごとく死に至るだろう。これこそがマルクトの最後なり』だ。この中身が指し示すのはもしキムラスカが勝ったとしたなら、キムラスカはセントビナーに積まれたマルクトの民の死体を片付けるに至らないということだ。それが本当に片付けられなかったか病を恐れて引き上げての物かは知らんが、どちらにせよその処置に失敗をしたのは事実。つまり一年や二年では敗戦した国に対する処置など取れんというのが現実で、マルクトが勝ったとしても預言に詠まれたような結末は有り得るという事だ。何せ世界を一つにまとめようとする規模の戦争だ、どうあがいたところで被害は出る。それも取り返しのつかない大きな被害がな」
「・・・そしてそこから新たなる毒を生む可能性は否定出来ん、という事か。いやむしろ預言がある分余計に有り得ん事ではない・・・成程、それを思えば確かに世界を一つにまとめようとするなど無理な話だ」
いかに世界をまとめることが困難であるか。預言にあった言葉の中身までもを持って例を真剣に上げていく比古清十郎に、ピオニーは最後には確かにと納得して自然に頷いていた。
「俺の私見だが所詮人が一つにまとまるなど無想に過ぎん。このマルクトにキムラスカの二国体制で世界を二つに分けた状態でまとめてこれた時点でもう出来すぎだったんだ、例え預言を達成する為に動いてきたダアトの存在があったと言ってもな。それを無理矢理に一つにしようとすれば今度は破綻が生じ、それこそ世界の破滅に繋がる・・・だからこそ俺は止める、世界が破滅する前にお前を殺してな」
「・・・いや、よくわかったよ。お前の話を聞いて改めて決心した、世界をまとめようとはしない。俺もマルクトが終わるのもだが、世界が終わるのなんて嫌だからな。だから約束しよう、マルクトからキムラスカに戦争を仕掛けることも無理に支配をしようとすることもないとな」
そしていかに比古清十郎が世界を想いその為に行動するのか、その決意をまざまざと見せられたピオニーは最後には晴れ晴れとした笑みを浮かべ改めて約束した。世界の為に戦争はしないと。
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だがそれでもそう思った訳を聞かなければならないと、ピオニーはその比古清十郎に冷や汗混じりに再度問い掛ける。
「理由は二つある。まず一つはきっかけが変わるとは言え戦争が起きたならマルクトが負けてしまい、預言に詠まれたような結末にならんとも限らんからな。無論キムラスカが負けた場合でも預言に詠まれたような事態が起きる事も有り得ん話ではない。だからそう言った可能性を排除するために手っ取り早く戦争の元を消すのがいいと思っただけだ」
「おいおい、ホントに手っ取り早過ぎだろ・・・」
それで比古清十郎は至って普通に一つ目の理由を語るが、自身の殺害までも普通に語られたのでピオニーは頭に手をかけ参ったと言った様子で視線を背ける。
「二つ目だがどちらかと言えばこっちが本題だ・・・それは世界を一つの国がまとめるなど、土台無理だからだ」
「・・・世界を一つにまとめるのは無理、だと?」
だが続けられた本題という二つ目の中身にピオニーはたまらず比古清十郎を見た、何をと真剣に見つめる形で。
「預言の中身を聞いただろう、お前も。その中で病はマルクトの地より持ち込まれたと言ったはずだ・・・だが考えてもみろ。今まで歴史上で預言に詠まれていたような争いはあくまで隣国を併呑して下し、キムラスカとマルクトが徐々に大きくなっていったといった規模の物でしかない。そして時間をかけて領地を各々の物にしていった訳だが、世界を分ける二国がぶつかりどちらかが消えたなら勝者の国が敗者の国を真に従えるまでどれだけの時間がかかると思う?」
「それは・・・少なくとも一年や二年ではまず無理だな。そもそもからしてキムラスカとマルクトは犬猿の仲で、どっちが勝っても民の侵略した側への負の感情は抑えるのは難しいだろう・・・」
「そうだ。それに預言に詠まれていたのは『要塞の街はうずたかく死体が積まれ、死臭と疫病に包まれる。ここで発生する病は新たなる毒を生み、人々はことごとく死に至るだろう。これこそがマルクトの最後なり』だ。この中身が指し示すのはもしキムラスカが勝ったとしたなら、キムラスカはセントビナーに積まれたマルクトの民の死体を片付けるに至らないということだ。それが本当に片付けられなかったか病を恐れて引き上げての物かは知らんが、どちらにせよその処置に失敗をしたのは事実。つまり一年や二年では敗戦した国に対する処置など取れんというのが現実で、マルクトが勝ったとしても預言に詠まれたような結末は有り得るという事だ。何せ世界を一つにまとめようとする規模の戦争だ、どうあがいたところで被害は出る。それも取り返しのつかない大きな被害がな」
「・・・そしてそこから新たなる毒を生む可能性は否定出来ん、という事か。いやむしろ預言がある分余計に有り得ん事ではない・・・成程、それを思えば確かに世界を一つにまとめようとするなど無理な話だ」
いかに世界をまとめることが困難であるか。預言にあった言葉の中身までもを持って例を真剣に上げていく比古清十郎に、ピオニーは最後には確かにと納得して自然に頷いていた。
「俺の私見だが所詮人が一つにまとまるなど無想に過ぎん。このマルクトにキムラスカの二国体制で世界を二つに分けた状態でまとめてこれた時点でもう出来すぎだったんだ、例え預言を達成する為に動いてきたダアトの存在があったと言ってもな。それを無理矢理に一つにしようとすれば今度は破綻が生じ、それこそ世界の破滅に繋がる・・・だからこそ俺は止める、世界が破滅する前にお前を殺してな」
「・・・いや、よくわかったよ。お前の話を聞いて改めて決心した、世界をまとめようとはしない。俺もマルクトが終わるのもだが、世界が終わるのなんて嫌だからな。だから約束しよう、マルクトからキムラスカに戦争を仕掛けることも無理に支配をしようとすることもないとな」
そしていかに比古清十郎が世界を想いその為に行動するのか、その決意をまざまざと見せられたピオニーは最後には晴れ晴れとした笑みを浮かべ改めて約束した。世界の為に戦争はしないと。
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