時代と焔の守り手は龍の剣 第十九話

「ま、これから先の事はこれからいくらでも考えられるんだ。しばらくは僕も身の振り方を考えとくよ」
「・・・そうですか」
そんな微妙な空気が漂う中、どうするかはこれから決めると言ってさっさとベッドに向かうシンクにフリングスは話をこれ以上続けることもなく終わらせる。
「・・・あの、ルークさん。フリングス将軍に何を頼んでいたんですか?」
「あ、それは・・・悪い、今は言えない・・・」
「え・・・?」
そこに今度はセカンが何を頼んだのかとルークに聞くが、ルークは少し苦い顔をした後を首を横に振り話すことを拒否する。
「あんまりこれは誰にでも言えることじゃない・・・その時になったら言うから今は勘弁してくれ、セカン・・・」
「・・・はい」
その反応にセカンは少し呆然とした様子だったが、ルークの苦いまま紡がれる言葉にそれ以上は何も返せず頷く以外に出来なかった。















・・・一方所は変わって、ピオニーの私室。
「・・・いい趣味をしているな、俺の陶器をブウサギの餌の皿にするとは・・・」
だが皇帝陛下の部屋と呼ぶにはあまりにも物が乱雑として置かれていて、本来農家で飼われる家畜であるはずのブウサギが何匹も自分の作った陶器の皿で餌を食っている光景に、比古清十郎は素直に感嘆の声を上げていた。
「はは、コイツらはこの皿じゃないと食わなくってな。もしかしてこんな扱いを自分の作品が受けてて嫌な気分になったか?」
「いや、むしろ逆だ。いかに出来がよかろうと所詮陶器は消耗品に過ぎん。それを使わず後生大事に拝むだけなど、俺からすればそれこそ無駄に過ぎん。まぁ・・・流石にブウサギの餌の皿にされるとは思っていなかったがな」
「はは、まぁ納得してくれたんなら何よりだ」
ピオニーはそんな声にブウサギの背を優しく撫でながら粗雑に陶器が扱われるのは嫌かと笑顔で問いかけると、比古清十郎はまた上機嫌に皮肉げに口角を上げ否と返す。その答えにピオニーは笑いながらそのブウサギの背から手を離し、一瞬にして空気だけを引き締める。
「それで、俺に何の用だ?」
「あぁ、少し言いたいことがあってきただけだ。それを言い終わればすぐ出ていく」
皇帝としての威厳に満ちた物へと雰囲気が変わった。だが一切そのピオニーの雰囲気に物怖じすることなく、比古清十郎は淡々と述べる。
「もうすぐ全てが終わる訳だが、その後マルクトはどう動くつもりだ?」
「どう・・・とは?」
「今の状態で事が済めばマルクトがキムラスカとダアトより優位で進むだろう。それでどうするのかと聞いているんだ」
「それなら答えは簡単だ。預言の事もあるから変に状況がこじれてはまた戦争ということになりかねん。だから付かず離れずで戦争を誘発するようなことがないよう、距離を取って接するさ」
「・・・そうか。ならいい」
そこから比古清十郎が聞いたのはこれからマルクトはどうする、という方針を問う物。その問いにピオニーは答えは決まっていると言わんばかりに適度な距離を取ってキムラスカとダアトと接すると返し、比古清十郎は満足そうにさっと後ろに向き直る。
「おいおい、ちょっと待ってくれ。言うだけ言って終わりってのは無しにしてくれ。もし俺の答えがお前の考えに沿ってなかったらどうなってたんだよ?」
そんな投げっぱなしで消えようとした姿に急いでピオニーは引き止める声を上げると、比古清十郎は振り返ってニヒルな笑みを浮かべた。
「決まっている、ここで覇権を争うといった言葉が聞けたならいずれお前の首を取りに来る事になっていた」
「っ・・・おいおい、選択を間違ってたら俺殺されてたってのかよ・・・」
それで出てきたのは極めて大胆な殺人予告だったが、相手が相手なだけに冗談で済ませることが出来ずピオニーは冷や汗を確かに流していた。











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