時代と焔の守り手は龍の剣 第十九話

「もし仮にローレライを解放したとしましょう・・・その時は彼の目的にもよりますが、その存在はいずれ明かさねばならなくなります。何せ第七音素の集合体です、いずれはキムラスカかマルクトかダアトのどこかがその普通に有り得ない量の音素を関知するでしょう。そして私にフリングス少将は今までどのような行動を取ったかをピオニー陛下に報告しなければなりません。どうなるにせよ、その存在を隠し通すのは難しいでしょう」
「だろうな」
「そんな時に噂を聞きつけローレライを担ぎ上げようとするだろう所は何処だと思われますか?」
「聞かれるまでもない、ダアトもしくはユリアシティだろう・・・そしてそうなればローレライがどのような考えを持っているかにもよるが、預言を止める事も第七音素を世界から無くす事も全世界からの反発を受けることで容易ではなくなる・・・と言った所か」
「流石ですね、その通りです・・・現在我々がローレライを解放して得られると確定しているメリットは精々、彼を解放したことによっての名声を得られる事くらいです。ただそんな名声など得たところで世界が終わってしまえば元も子もありません」
「成程、確かに得られる物など精々その程度の上に物の役にも立たん。そう考えればあまりローレライを解放する利はないと言えるな」
そこでローレライを解放した時のメリットとデメリットがいかようになるのかと事細かに説明するジェイドに、比古清十郎も納得した様子で頷く。
「ですがローレライが解放を望む目的を全部聞ききれていないのに加え、ここで彼を放っておいた方がいいと言えるような理由が取り立ててないのも事実・・・そして私としてはローレライから話を聞きたい、と言うのが本音になります」
「・・・それはわからんでもない。鍵まで渡されてそこで無視して終わり、ではどうにも気分が悪い」
「それは、俺もそう思う・・・ローレライの言葉はただ自分の解放を望んでるって感じだったし・・・」
「「「「・・・」」」」
だがそれでも理屈だけで納得出来る程ローレライの行動は小さな問題ではない。簡単にローレライを無視出来ないと自身の考えを述べるジェイドに比古清十郎もだが、一番後ろの座席にいたルークも微妙な表情で同意する。
「・・・私の考えを聞いていただいてよろしいですか?・・・ローレライをどうするべきか、正直な所その存在が大きな問題となっています。そして解放するかどうか、という話になったのも偶然の要素もあっての事です。ですので私はこの今の状況をどうするべきかというのを話すのと協力を仰ぐため、ここでグランコクマに行きピオニー陛下に話をした方がいいと思っています」
「グランコクマ、か・・・」
一同、あまりにも大きな問題に軽々しく発言する事が出来ない。そんな状態にジェイドは重々しくも声を上げ慎重案としてグランコクマに行くべきと発案して、比古清十郎はその声に少し考え込む。
「・・・やむを得んな。現状では俺達だけで事を進めるには少々面倒が大きすぎる。ならばここはグランコクマに行くべきだ」
「俺も、そうした方がいいと思うな・・・俺達だけで知ってていい問題じゃないと思うし・・・」
「どうですか、フリングス少将?」
「私もそうするべきかと。流石にここまでの事態は想定出来ていませんので、陛下にお話をするのは妥当だと思われます」
「ありがとうございます」
そして少し間を空けそうするべきと言った比古清十郎にルークも同意し、最後にルークの反対の通路を挟んだ座席に座っていたフリングスにジェイドがどうかと問えば同じく同意で返ってきた事に頭を下げる。
「・・・すみません、ノエル。シェリダンに戻った後、すぐにグランコクマに飛んでもらっていいですか?キムラスカの人間である貴女にその様なことを頼むのは筋違いであると思うのですが、あまり時間をかけたくはないんです」
「大丈夫ですよ、気にしないでください。でもシェリダンに一度行ってからでは時間がかかりますから、これからグランコクマに直行しますよ」
「いいんですか?」
「気にしないでください。兄のこともありますからこれくらい大丈夫です」
「すみません、ありがとうございます」
その意志を確認出来たことで今度はノエルにグランコクマに行ってもらうように頼み込むが、予想以上に協力的な上に引かない笑顔を見せられジェイドは頭を下げ謝意を述べた。







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