時代と焔の守り手は龍の剣 第三話

「威勢のいい小娘だな。いいだろう、俺達がここに来た目的を教えてやる。俺達がここに来たのは導師を手に入れる為だ」
「導師を・・・!それに貴方はその服は、神託の盾の人間・・・!?」
「いかにも。俺の名はラルゴだ」
「っ・・・黒獅子ラルゴ・・・!」
その声に賛辞を送りながらラルゴと名乗った男はイオンを奪いに来たと言い、セカンはその名に表情を険しくする。
(導師を奪いに来たのが神託の盾でも六神将と名高いラルゴ・・・この襲撃、神託の盾がどれだけの戦力なのかはわからないけど導師を奪う為にこんなマルクトの人達を犠牲にするようなやり方・・・!)
・・・セカンは慈愛に満ちた優しい子だ。そしてそれと同時に頭がいい子でもある。導師がマルクト軍の中にいて中途半端な手出しが逆効果だと悟ったからこのやり方を選んだのだと理解する反面、そんなやり方を選ばなくてもよかっただろうという気持ちも持ち合わせている。
だがそんな相反する時に自らの感情を優先するのではなく、合理的な最善の手段を優先するべき。だからこそセカンはこの場で最善で合理的に場を進められる手段を選択する。



「・・・今は貴方に構っている時間はありません。貴方を倒して、ここを出ます!」
「むっ・・・!?」
‘ハラッ’
・・・出来ることならマルクト兵を弔ってもやりたいし、敵も討ってやりたい。だが状況がそれを許すはずがないから、選ぶべきは速やかにラルゴという障害物を排除してのこの場からの脱却。
無念も含めた強い意志を込め、セカンは鍔ぜり合いを止め一歩飛びのくと今度は一瞬でラルゴの前に詰め寄りいつの間にか納刀されていた刀を抜刀する。が、ラルゴは一瞬遅れそうになったが刹那のタイミングで身をよじって避ける。その結果服は一枚斬られたが、ラルゴ自体は無傷・・・
(ぬっ・・・速さはこの小娘の方が上か。剣撃も相当な威力でまともに喰らえば俺でも危なかった・・・だが抜刀術は聞く所によればこの抜き終わった瞬間こそが死角!ならばこそ一撃で仕留める!)
その瞬間、ラルゴは相手の力量を計ると同時に抜刀術の弱点についてを考え今この瞬間が勝機だと鎌を振り上げる・・・



その瞬間だった。



‘メギゴギッ!’



「「「「!?」」」」
刀を外したセカンに勝機なし、ジェイドはそんな様子に急いで譜術による援護をしようとしたがそんな暇もなく勝負は決した・・・刀を納めていた鞘を二回目の刀に見立てたかのような、左手での鞘での抜刀術により。
「ぐ、はぁ・・・!?」
肋骨辺りが何本か砕ける鈍い音が辺りに響き渡る中でラルゴは何が起きたのか理解出来ず、同時に苦悶に満ちた声を吐き出しながら前のめりに倒れ込む。
‘ズンッ’
そしてラルゴが地面に倒れ込むと、ラルゴを避けたセカンはそっと誰にも聞こえない程度に納刀しながら呟く。



「飛天御剣流、双龍閃」
・・・双龍閃。これは抜刀術において外した後の隙を生じぬよう、その後の隙の部分に抜刀術で刀を握らず残った手で鞘を握り抜刀術の後を追うよう再び攻撃する技である。
ただ隙を生じぬように行う為の特性ではあるが、刀と違い鞘では多少威力に差が出る。最も威力に差が出ると言った所で真っ二つになるか、攻撃された箇所が最低でも複雑骨折するので戦闘不能クラスになるのは確実だ。



「お、おい!師団長がやられたぞ!い、急いで他の師団長達に報告だ!」
場にいる視線が少しの間セカンに集中していた中、場に現れた神託の盾の兵士二人がいきなり引き返していく。
「あっ、まずい・・・」
その様子を見たセカンは先程までの顔と一転、苦く変わる。
「何がまずいのですか?」
「大佐・・・?」
そんなセカンに声をかけてきたのは、値踏みをするような目をしたジェイド。









7/19ページ
スキ