時代と焔の守り手は龍の剣 第十八話

・・・妙な感覚に皆が浮わついた空気になる。
「皆さん、落ち着かれてください。技術者の方々の話によればしばらくこの浮遊した感覚が続いた後、その感覚が途切れた時が地核に辿り着いた時とのことです。なのでそれまではここで過ごされ、止まった後は甲板に止めてあるアルビオールに乗り込んでください。それで作業は終了です」
その場の空気にフリングスの説明の声が響き渡り、一同の空気が落ち着き払ったものになる。















・・・そんな空気の中で浮力を失った水と共に地核に向かうタルタロス。その際に見える荘厳だがかつて大陸があったと思えない風景に一部を除き、一同は神妙な面持ちで降下するタルタロスの中を過ごした。

そして数十分の時間などすぐに過ぎ、タルタロスは降下を止め地核へと辿り着いた。



「・・・さて、時間もないことだ。さっさとアルビオールに乗って外郭大地上にまでずらかるか」
装置の設置もやり終え残る作業は上に戻るだけ。紫色の障気渦巻く景色を全く見ようともせずアルビオールへと向かう比古清十郎に、ルーク達。
‘キィィィン!’
「「「「っ!?」」」」
「っ!?・・・なんだ・・・?」
だが突然甲高く辺りに鳴り響く高温に、一同が驚愕し比古清十郎も滅多にない様子で目を見開き原因を注視する・・・その原因とは比古清十郎の持つ、刀。
『おぉ・・・この刀からユリアの力を感じる・・・これなら・・・!』
「何・・・刀が、喋っただと・・・!?」
その上で刀から何か感慨に満ちた声が聞こえるという事態に比古清十郎はたまらず刀を抜く。その刀身は今の刀身に書かれた文字だけでなく、その身全てを強く発光させていた。
「おい、貴様はなんだ・・・!」
『・・・おぉ・・・そなたは現代の比古清十郎か・・・時が経ち時代も変わったとは言え、そなたはユリアの記憶にあった姿と似ている。開祖の比古清十郎と・・・』
「・・・何?開祖の比古清十郎だと?それにユリアの記憶にとは・・・お前は、まさか・・・」
即座に何者かと今までの相棒を鋭い視線で見る比古清十郎に、その声は多少間を空けつつ懐古的な声で気になる事を述べる。その中身に比古清十郎はまさかと目を見開く。



『・・・いかにも。我はローレライだ』



「「「「!?」」」」
・・・その中身を察し答えを言う声。だがあまりにも衝撃的なそのローレライという名に、比古清十郎以外の面々の表情が信じられないといったものに一斉に変わった。
「・・・聞いていないぞ、これにローレライを呼び寄せる効果があるなど・・・!」
『いや、それは間違いではない。事実この刀に込められたユリアの記憶にも我を呼び寄せる為の効果など想定していなかった。だがこうやってユリアの力を解放した刀をそなたがここにまで持ってきてくれた事で、我がその力を感じこの刀に意識を飛ばしたに過ぎん。つまりはこうやって会話が出来ているのは偶然の産物なのだ、このような状況になると誰も考えなかったが故のな』
「・・・つまりはユリアも開祖も、そしてお前もこんな事態になることを想定していなかったということか・・・」
『そうだ』
「「「「・・・」」」」
ただ比古清十郎自身も少なからず動揺したように揺れた声を上げる中、ローレライという声の偶然と強調する中身に自然と一同聞き入っていた。そんな歴史があったという、真実と今の偶然の入り乱れた中身に。
「・・・お前がローレライというのは状況から見れば疑うべくもない、というのはわかる。だが何故今この場に来た?そして何故今更現れた?・・・答えんというのであれば何をしに来たか知らんが、とっとと消えろ。用がないなら邪魔だ、ここから早く飛び立たねば危なくなってくる」
『・・・歯に衣着せぬあまりにも辛辣で率直な物言いだな。だがこちらもそれを承知でここに来た身だ、無駄に時間は取らせないから話を聞いてくれ』
「・・・フン、いいだろう。とっとと話せ」
ただ1人次第にいつもの様子に戻り慇懃無礼に発言する比古清十郎にローレライは気にした様子もなく、話を聞いてもらうよう願い出る。その声に居丈高に腕を組み話を促す比古清十郎に、周りは緊迫した空気を抱いていた。これから世界の命運を左右するであろうことが起きると、知らず知らず思っていただけに・・・









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