時代と焔の守り手は龍の剣 第十八話

・・・そんな暗い胸中は明かさず、ジェイドは自らの過去をルークに洗いざらい話していった。自分が昔どのような子供でどのような環境で育ってきたのか、その環境の中でかつての恩師であるネビリムを過失とは言え殺してしまったこと、そのネビリムを生き返らせるためにレプリカ技術をディストと共に産み出したこと、その結果ネビリムは甦らず二人はしばしレプリカ技術の更なる可能性はないかと追求したがジェイドはディストと違い研究を諦めたことを・・・












「・・・とまぁ、貴方に会うまでの私とディストの関係はこう言ったところですね」
「・・・」
・・・ジェイドは話をルークと会った所で一先ず区切る。それまでの話を聞いていたルークはまだ真剣に表情を崩さない。
「・・・どちらが正しいなどと私は言えません。いえ、どっちも間違っていると私は今なら胸を張って言えます。ディストは過去のみを追いかけ過去のままを望み、私は過去から目を逸らし1つ距離を置いた所からただ自らの優位を保ったまま子供のような矜持を勘違いしながら持って生きてきました。それが虚構で出来たもので、見たくないものを自分の中から無意識に追い出す為の物だと考えようともせず・・・最も、そんな考えはカクノシン氏に会った時に打ち砕かれましたがね」
「カクノシンに・・・あの時か」
「えぇまぁ・・・容赦ない言葉をいただいたおかげでね」
尚も続く独白だが比古清十郎の事が出てきた事で、ルークは初対面の時を思い出しジェイドは苦笑を浮かべる。
「それ以前の私でしたらディストと会ったとしても、精々彼をおちょくるような事ばかりを口にしまともに取り合おうとはしなかったでしょう・・・なんだかんだでレプリカ技術を抜きにすればディストとのじゃれあいはそこまで不快ではありませんでしたから、それこそ以前のままのやり取りをしていたんでしょうね。嫌な過去を掘り返さない程度に昔を懐かしむ形で」
そのままにジェイドはディストが聞いていたならそれこそ狂喜しそうで、前の自身なら絶対に口が裂けても言わないだろう事を明かした。ディストとのじゃれあいは不快ではなかったと。
「・・・ですが過去から目を逸らさず自分の罪と向き合っていくと決めた時、私は決めたんです。ディストとの事もケリをつけなければならない、それには今までのように無意識に馴れ合いが心地いいと言った空気を出さないようにしようと」
「・・・だからディストはその空気を感じて凹んでるのか」
「でしょうね。彼は何よりも思い出の中にある私達との時間を好んでいましたが、今の私にはその思い出に付き合って差し上げる気はありません。それは彼にとってキツいのでしょう、思い出の中にいる美化された私のその面影が無くなっていくことがね」
「・・・そういうことだったんだな」
「そういうことです」
ただそこからそんな過去を含めた上でキッパリと甘さもシャットアウトしたのだと宣言したジェイドにルークも理解した、だから過去を忘れきれてないディストはあぁなったのだと。
「・・・まぁ、色々話してもらって悪かったな。こんな話、お前もそんなにしたくなかっただろうしさ」
「貴方なら構いませんよ、先程も言いましたが私が言いたいと思ったから言ったんですから」
「・・・うん」
ただここで話が大分重かったというのを思い返し、ルークは軽々しく聞くものではなかったと気まずげに謝罪を向ける。だがジェイドは至って気にした様子のない微笑を浮かべていたので、その姿に逆に複雑にルークは頷くしかなかった。










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