時代と焔の守り手は龍の剣 第十八話

(第七譜石だけならユリアを脅し奪い取ったと解釈する事が出来たのだが、こんな二千年越しにでも発動する仕掛けを施すような事を祖が望んだとは思えんからな。そんな回りくどい事をするくらいなら預言を詠めなくしろ、と俺だったら間違いなく言うだろう。しかしこう刀に仕掛けが施されていることがユリア自身が祖に協力したことを示している、そしてユリアがこれ以上自身を預言の象徴として担ぎ上げられないように自身を殺させたという話も頷ける物になったな・・・)



・・・しかしそもそも比古清十郎自身、その話を全部は信じきれていなかった身である。例え第七譜石があったとしてもそれが奪い取って斬殺したと疑っていた為に。



だがその考えは口伝に伝えられた内容通り刀に仕掛けられた仕掛けが発動したことにより否定され、口伝が間違ってなかったことを理解したと同時にユリアの覚悟の行動があったことも真実なのだと理解した。
(最初は預言を詠み預言がいかに正確かを理解させようとしたユリア・・・確かにそれは成功した、預言がどれだけのものなのかを印象付けることにはな。その上で預言によりどのような形で世界の危機が訪れるのかを伝えようとした・・・だが時が経つにつれ次第に預言はユリアの意志と狙いを離れ世界の繁栄の為の物なのだと独り歩きし、果ては弟子のフランシスまでもがユリアを預言の為の道具として扱わんとした・・・そんな状況に陥っていたのならもう自身がこれ以上預言を持って世界を変えようとすることを諦めると同時に、自身の存在が世界にあることがまずい事になると理解したのだろうな。それでホドにいた時にその存在を知って来た祖に世界を変える為の一縷の望みを込めて祖に二つの遺産を残し、自殺のような形で祖に殺された・・・ユリアを信望する教団の信者からすれば嘘としか思えん与田話だろうが、これが歴史の事実だ。例え認められずとも、語られずともな・・・)
その上でユリアの想いと歴史上の出来事をトレースし、ユリアの絶望がいかほどのものだったのか。そして開祖の『比古清十郎』に望みは薄いと思いつつも後々の事を頼み、殺された・・・そんな真実のユリアの死を公表したとて意味がない、そう比古清十郎は珍しく遠くを見るような目をしながら考えていた。
(・・・皮肉な物だな。世界の為をと思うやつが死んで、自らの欲を満たそうとするやつが長く生き残る事になるとは・・・そして負の遺産を残してもいる。事実フランシスの残したダアトは預言を実行する事が目的の、フランシスの欲望の形だけを体現した組織になった。ユリアが望んでいないにも関わらず、だ・・・)



・・・全てが事実として繋がった今だからこそ比古清十郎は思える、ユリアの行動が発端ではあるが実質はフランシスの行動がこの預言主体の世界を作り出した結果であると。



比古清十郎はそう思い少しユリアが哀れに思えてならなかった、想いを理解してもらえず逆にその想いを利用されたことを。
(・・・俺が祖にユリアの想いを確かな形で受け継いでいるかどうかは知らん。だがもう預言を変える時は近い、あんたらの願いはそろそろ叶うさ)



・・・そんなユリアの行動があったからこそ今の自分がある、そう考える比古清十郎にとって開祖とユリアの存在は同列の存在であった。



二人の想いの果てに今飛天御剣流がある、預言に詠まれた世界を変える為に。二人の全てを受け継いでいるとは思ってはいないが、願いは受け取った上でそれを成そうとしている・・・そう自信を持っているからこそ比古清十郎は微笑を浮かべ酒を煽った、これから来るであろう未来を思い浮かべ・・・







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