時代と焔の守り手は龍の剣 第十七話

「では私はシェリダンに向かわせていただきます。何人か兵士を護衛の為にこちらに向かわせますので、その兵士と共にグランコクマに戻られてください」
「はい、わかりました・・・ではナタリア殿下はお任せください」
「お願いします・・・では行きましょう」
フリングスの気遣いに答えつつもきちんとした対策を残しつつ行くと言うジェイドに快くフリングスも頷く。そこで一礼をしてジェイドはシンクとディストに声をかけ、二人を引き連れ宿を後にしていった・・・















「・・・さぁ、シェリダンに向けて出航してください」
「はっ!」
・・・ベルケンドより少し離れた地に待機していたタルタロスの中にて、ベルケンドからここに来たジェイドは一通りの処置を終えた所で兵士にベルケンドに向かうよう出航を命じる。
「・・・ジェイド、本当に貴方変わりましたね」
「・・・いきなりなんでしょうか?」
兵士が答えた後運転に集中した事でディストがしみじみと声をかけてくるが、そんな声にジェイドは分かってはいるが敢えてとぼけたように首を傾げる。
「・・・昔の貴方でしたら上から物を見て、今も私を小バカにしていたはずです。それなのに今の貴方は人を見下しもせず、嘲るような皮肉を全く言いもしない・・・」
「・・・それは私を馬鹿にしているのですか?」
「い、いえそのようなことは・・・」
「・・・ふぅ」
そんな姿にディストが明らかに喧嘩を売ってると取られかねない暴言を吐きジェイドが素直な感想を口にすれば、慌てて身を引くがジェイドは嘆息を一つ入れるに留まる。
「そのように怯えなくてもよろしいですよ、事実私も色々貴方にしてきましたが今はそんなことをする気はありません」
「っ・・・なんでそんなに貴方は・・・!」
「昔と変わった私が気持ち悪いですか?・・・別に気持ち悪いと思っていただいて一向に構いませんよ、誰かに理解していただくために変わった訳ではありませんからね」
「・・・っ!」
その上で気遣う言葉をかけるが昔の態度と明らかに違うと悲鳴染みた声をディストは上げかけるが、それすらも受け入れている達観したジェイドの返答に今度は絶句した。
「・・・まぁとりあえずシェリダンに着くまでは休んでいてください。それまでは特にやっていただくこともありませんからね」
「っ・・・はい・・・」
そんな姿にディストが望むような答えを何も返さず気遣うよう休息を勧めれば、少し寂しそうに了承だけしてその場を去っていく。
「・・・死神も馬鹿だよね、変わらない物なんてないのにさ」
「・・・まさか貴方にそんなことを言われると思いませんでしたよ、シンク」
そこにシンクが言葉をかけてくるが、中身が同情めいた物だけにジェイドの顔が微妙な物へと変わる。
「僕はあんたが昔どうだったかなんて知らないけどさ、僕からすればああやって全く変わらない死神の方がどうかと思うけどね。初めて会った時からあんなんだったし」
「・・・相当ディストに対して鬱憤が溜まってるようですね」
「鬱憤っていうかあのノリが嫌いなんだよ。出会った時からずっとあの自分大好きですって感じで間違ったことしてませんって自信だけはあるあのノリがね」
「・・・そうですか」
そこから自分がこう言った訳でディストが嫌なのだとこぼしていくシンクに、自身も心当たりがあるだけにジェイドはただそれを受け入れる。
「ま、別にいいんだけどさ。あんたの態度であいつがヘコむの見てると気持ちいいし・・・あぁ、悪かったよ。あんたにイチイチ聞かせることじゃなかったね。僕も今から休むから、また後でね」
「えぇ、ごゆっくり・・・」
そして爽快と自分で言いたいだけ言って退出していくシンクの後ろ姿をジェイドは見送りながら、呟く。
「変わった私と変わってないサフィールですか・・・私の変化はともかく、サフィールには変わって欲しいですね・・・」
・・・自身が変わることに抵抗はない、むしろ変わって欲しいのはとかつての幼馴染みだった頃の名を呟く。サフィールとディストの本名を呟くジェイドの瞳は少し寂しげに細まっていた・・・















・・・別れもあれば変化もある



変わらないものと対すれば対する程に変わったものは対峙する事になる



ズレ異なる状態の未来に



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