時代と焔の守り手は龍の剣 第十七話

「文明開化に大きな功労を為したのは第七音素に預言の存在があった、それは否めんだろう。だがそれはあくまで創世歴においての話でしかなく、現に外殻大地を押し上げた後どれだけ文明は発達した?・・・答えなど聞くまでもない、創世歴より文明は発達などしていない。そうだろう?」
「そ、それは・・・否定出来んが・・・」
「それが答えだ。そもそもからして文明を後退させねば人類は生きることもかなわなかったのだ、発達した文明による利器など今この地上にはほぼ存在せず再現する事すら出来んまでにな。それなのに未だ第七音素と預言にすがって何になる?預言により得られる物など所詮仮初めの上にいつか訪れる破滅への道筋だけだ、障気による破滅のな。それを避けたいならさっさと障気の驚異を取り除く為にプラネットストームを止めるべきだ、例え誰に反対されようともだ」
「・・・つまりは得るものなどないからさっさとプラネットストームを止めてしまえ、そう言いたいのか・・・?」
「フン、それだけではない。いくら言葉を尽くしたとて預言を詠むのに第七音素のを頼るのをやめろなどと言って、世界がすんなりと受け入れると思うか?いくら預言により世界が滅びる危機に満ちていると言ってもな」
「・・・いや、有り得ない。むしろそれが嘘だと言って預言をより信望する可能性が高いな・・・」
「そうなると分かっていて、何故預言を気にしてやらねばならん?はっきり言えば邪魔なだけだ、障気をどうにかするにはな」
「・・・むぅ・・・」
そこからどんどんと心の内にある鬱憤までもを含めそうするべきと語る比古清十郎に、スピノザは反論を次第に潰されうなる以外に出来なかった。
「・・・まぁ、今はそれは置いておく。今必要なのはその禁書に書かれた障気の押し込みの手順だ」
「お、おぉ・・・そうだったな・・・」
だが少し本題と流れが逸れていると感じたのか比古清十郎が話題を元に戻し、スピノザも気を取り戻す。
「・・・まぁその手順に必要な材料については一応揃っているが、ただやってほしいことがある・・・」
「何だ?」
「そっちのマルクトの軍人には話はしておいたが、その為の装置を作るにはタルタロスが必要になるのでな。まぁそれはマルクトの本国に事情を説明し使えるようにはしてもらうとの事だからいいだろう・・・必要なのはここからなのだが、障気を押し込むには地核の振動周波数をセフィロトから測る必要があってな。それを調べてきて欲しいのだ。その為の測定器は既に作って、ここにある」
「成程、そう言うことなら引き受けてやろう。どちらにせよ俺にミュウがいなければセフィロトの封印は解けんからな」
ただやってもらうことがあると振動周波数の測定器を取り出して説明するスピノザに、比古清十郎は意味深な事を言いながらも測定器を受け取る。だがそこでスピノザの顔に悩ましげなシワが刻まれる。
「・・・それと後、これは成功確率を高めたいなら協力を求めたい者達がいる。その者達はシェリダンにいるんじゃが、その者達とわしにもう二人の仲間はいわゆる犬猿の仲というやつでな・・・お主らが成功確率を上げたいというのであればシェリダンのその者達を引き込む事を勧めるが、どうする?」
「・・・随分と回りくどいことを言う。出来れば協力をさせたいというのが本音なのだろう、お前は」
「・・・本音を言うならそうだ。だが本来い組とめ組は対立している存在でわしの言葉1つで協力というのは難しくてな、誰かに間に立って欲しいんじゃ。障気を消す成功確率を上げる為にな」
「・・・フン」
そこからスピノザはシェリダンの知人達を協力させればより確実になると言うが、そうしてくれという懇願に近い形の声になってると比古清十郎は静かに冷ややかな目でつっこむ。その返しに理由を説明するスピノザだったが、ここで真剣に障気をどうにかしようという姿勢を見た比古清十郎は口元をわずかに緩め鼻を鳴らす。









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