時代と焔の守り手は龍の剣 第十七話

「・・・この禁書についてじゃが、専門的な知識は大まかに省いて説明するが厳密には障気を中和する方法とは少し異なる」
「何?どういう事だ?」
「中和、と言うよりは障気を地上に出さないようディバイディングラインの下に押し込めると言った方が正しいんじゃよ。それもその為の装置を作って障気を押し込めたとて、装置はどう長く見積もっても半世紀を跨ぐまでにも耐えきれん。いつかは装置は壊れ、障気は込み上げてくる」
「・・・結局は元の木阿弥と言った所になる、という訳か」
「まぁ根本的解決にはならんが、それでも障気を押さえる手段は今これ以外にないのだろう。ならばこの禁書に書かれた事をやる以外に今は道はないとわしもじゃが、そちらのディストも考えておるようじゃぞ」
「・・・えぇまぁ、一応研究者としての観点から私もこの禁書について色々見分してみました。この禁書に書かれている内容以外に手の打ちようはないと私も思っています・・・私の言葉が信じられないというならジェイドにも後で聞いてみてください、彼なら私達と同じような結論に至ると思いますよ」
「・・・フン」
早速すぐに核心に入ったスピノザの解説。だがこの禁書では完璧には障気を消せないと言われ比古清十郎は憮然とした顔になるが、スピノザとディストが結託してジェイドの名を出してまで現状取れる手段はこれ以外ないと言われ不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「譜業に関しては俺は門外漢だ、専門職の人間がそこまで言うのなら現状それ以外には何も手段はないのだろう。やむを得ん、今はその判断を受け入れてやる・・・が、いずれ障気をどうにかせねばそれこそ世界は滅ぶ。預言かどうかなど関係無くな。そう考えればいずれプラネットストームを止める時が来るかもしれんな」
「プラネットストームを止める・・・じゃと!?お主それは本気で言うとるのか!?」
今は仕方ない、と本意でないと顔で語りながら妥協案を受け入れる比古清十郎。だが代わりに出てきたプラネットストームの停止案に、スピノザの表情が驚愕と信じられない物を見るような表情を併せた物に変わった。
「本気も本気だ、クソジジイ。そもそも障気の正体は汚染された第七音素という話だろう。どこでどうやって汚染された状態になったかは知らんが、そもそも創世歴以前は第七音素であったりパッセージリングであったりプラネットストームなどなく人々は暮らしていた訳だろう。そして障気もな・・・ならばこそ第七音素の恩恵をこの機会にかなぐり捨て、プラネットストームも止めて障気の元でもある第七音素をこれ以上地上に噴出させるのを止めるべきだと思うがな。何しろプラネットストームが活動することにより、第七音素は姿を現しているような物なのだからな」
「っ!・・・確かに言うとる事は理にかなってはおる。だがしかし、それをしてしまえばもう預言は詠めなくなるぞ・・・?」
「知ったことか、そんなもの」
「なっ!?」
そんな姿のスピノザに暴言混じりながらも、素人案ではあるが理屈として間違ってはいない理論を比古清十郎は告げる。その理論に納得しながらも預言の事を口にするスピノザだったが、それこそ預言が嫌いな比古清十郎は躊躇なく一言で切って捨てた。








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