時代と焔の守り手は龍の剣 第十七話

・・・そして数分後、一通り泣き終わったルークは比古清十郎から身を離す。
「・・・わりぃ」
「気にするな・・・どうやら少しはすっきりしたようだな」
「まぁ・・・な」
少し気恥ずかしそうだが先程のくしゃくしゃな顔より生き生きとした様子を見せるルークに、比古清十郎の表情も自然と和らぐ。
「ならいい。後は適当に自分の中で折り合いをつけろ、そこまでは俺も面倒はみきれんからな」
「うん、わかってるよ」
「じゃあ行くぞ、スピノザとやらの元にな」
「あぁ」
そしてそのままに自然と二人は壁が無くなったようにすんなりと先に進んでいくが、その姿を見てディストがセカンに近寄る。
「いきなりどうしたんですか、あの二人は?」
「・・・師匠は本当の意味でルークさんを認めたんですよ、自分の中にある葛藤と戦って勝った姿を見たことで。とは言ってもルークさんも辛かったっていうのがあったから誰かに寄りかかりたかったのもあったし、師匠はそんな姿に子供だからってことで自分から近付くことで寄りかからせた・・・肉体的にだけじゃなく精神的にも近寄った、だから多分二人の間に距離が無くなったんだと思います」
「・・・私としてはあの男が子供とは言えそんな容易に優しくするような人格者には見えないんですが」
「師匠はぶっきらぼうで人嫌いの乱暴者ですが、優しい人ですよ。ただあまり表に出てこないだけです」
「・・・そうですか」
明らかに親密度が増した。どうしてそうなったのかと問い掛けるディストにセカンは理由を話しつつも師匠は優しいからと強調すれば、なんとも言い難い様子でディストは引き下がる。やはり比古清十郎のイメージはディストの中では情け容赦ない羅刹のような男、となっているのだろう。
「お二人とも、お話はいいですが後に付いていかないと遅れますよ?」
「あっ、そうですね・・・すみません、フリングス少将」
「いえ、では行きましょう」
だがそんな会話をしている内にさっさと先を進む二人に置いてかれる形になったセカン達は、先を進んでいたフリングス少将から声をかけられる。すぐにその事に気付いたセカン達はその後を足早に追いかけていった・・・









・・・そしてベルケンド内の研究所に入った比古清十郎達はスピノザの所に向かい、対峙していた。



「・・・おぉ、お前さんがディストの言っておった剣士か」
「御託はいい、さっさと本題に入れ」
「・・・聞いていた通りの男だな」
「何を聞いていたかは知らんが、何度も言わん。さっさと本題に入れ。尚もグダグダ言うようであれば足の一本ぐらいもらっても構わんぞ」
「!わかった、わかったから刀をしまってくれ!」
・・・だがその対峙は比古清十郎からしてみれば機嫌が悪くなり、スピノザからすれば寿命が縮まったどちらにも益のないファーストコンタクトだった。まぁこれはスピノザの性分なのだろうが、警戒混じりに値踏みをするような目付きで比古清十郎を見てしまったのが原因にあたる。そもそもからしてどっち付かずで主体性のない態度を取るような人間が嫌いな比古清十郎だ、スピノザのヴァンに心から付いているでもなくかといって反抗を見せるでもない姿勢は気に入らない物として尚拍車をかけていた。



現に刀の鯉口を押し上げる姿に本気を察したスピノザは慌てて制止を命じながら、かつてダアトより持ち出した禁書を急いで胸元から取り出した。










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