時代と焔の守り手は龍の剣 第十七話

「着きましたわね、ベルケンドに・・・!」
「「「・・・」」」
・・・街の入口にてバチカルからこのベルケンドに辿り着いた比古清十郎達。だが先頭に立つナタリアが意気込んだ様子で拳を握っている姿に、後ろにいる三人の目は冷めた物となっていた。



・・・バチカルを出る時になってから実はベルケンドにルークはいると知らされたナタリア。その時ナタリアにこれ以降自分達は連れていく気がない為詳しい訳を言わなかったジェイドに、何故だとナタリアは詰めたが早くルークに会えるからいいだろうと言われたら「それもそうですわね」と返し代わりに明らかにやる気をみなぎらせた表情になっていた。

そんな姿に三人は共通してその姿の真意を『早くルークに会って自分を捨てさせないように説得する事が出来る』と思っていると、察していた。そしてそんなことをしても無駄だと、冷やかに共通して思ってもいた。



「・・・お待ちしていました、カーティス大佐」
「フリングス少将、すみません待たせてしまって」
「いえ、気にしないでください」
そんな状況で前からフリングスが現れナタリアそっちのけでジェイドに挨拶をしたが、当の本人は別に気にもしてないようであるしあえて無視をしているので当人達はすんなりと会話を成立させる。
「お話は伺っています、ルーク殿は宿におられますので付いてきてください」
「えぇ、わかりましたわ!」
当たり障りなく話を進めた所で早速本題に行こうと背を向けたフリングスに、聞いてもいないのにナタリアが意気揚々と返事し後を付いていく。そのナタリアを一層冷やかな目付きで見ながら三人も後を付いていく・・・












・・・そしてフリングスに連れられ宿の一室に入った比古清十郎達。
「ルーク!あぁよかった、無事でしたのね!」
「・・・ナタリア」
フリングスがルークの隣に行くとすぐさまナタリアは健気に無事を喜んでいると言った声を上げるが、対称的にルークの顔にも声にも喜びはなく静かな決意を秘めた物になっている。
(・・・あの様子ならまぁ大丈夫、のようだな)
そんな姿に既に決意は固まっていると見た比古清十郎は、冷やかな視線をなくす代わりに皮肉げな笑みを口元に浮かべる。
(とりあえずどうなるか、見物させてもらおうか)
大丈夫だと思ったからこそ後は事の経緯をなにもせず見守ろうと、比古清十郎は扉に背を預ける。
「・・・バチカルでの事は聞いた、災難だったなナタリア」
「っ・・・えぇまぁ、それは確かに・・・」
そんな比古清十郎の行動からルークが早速の本題を切り出せば、手紙で経緯を説明したと伝えていたのもありナタリアは意気を削がれ眉を寄せ少しうつむくだけで済む。が、それでもと前を向く顔には見るものが見ればすぐにわかる媚びが含まれた悲し気な目があった。
「・・・とは言え私は今こうやってカーティス大佐のおかげで事なきを得ました。ですが私は今では王女とは名ばかりの者と成り下がっております・・・」
「・・・だからなんだよ?」
「えっ・・・?」
自身の身に起こった不幸をさも盛大に語ろうとしかけたが、ルークから否定の言葉が入ってきた事にナタリアは言葉を止め戸惑う。
「大体その名ばかりの王女なんて事になったのも、元々お前の行動の結果だろ。叔父上に逆らう形でな。それは自業自得でしかねーと思うぞ、俺は」
「そ、それは・・・」
そこからすかさず自身がやったことだろうと突き放すように言えば、事実であるだけにナタリアは口ごもりルークをすがるように見る・・・だがそんなすがられただけでホイホイと言葉を撤回する気のない今のルークは更に押し込んでいく。







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