時代と焔の守り手は龍の剣 第十七話

「別に誰かの言ったことに不満を持つことなんて珍しい事じゃねーと思うんだよ。なんつーか例えとしてはちっちゃいけどベッドで寝てるところに朝だからって理由で、もうちょい寝たかったのを起こされたらムカつく事もあるだろ。けど、だ。それが力があるから、そうしたいからって人にそれをごり押ししていいのか?・・・言っちゃなんだけど今となっちゃ、あいつの行動は王女とかじゃなく単なるワガママな女にしか俺は思えなかった。つーか下手したらもうあいつ、女王のつもりで自分の意見と違う叔父上すら蔑ろにしてんじゃないのかって思ったくらいだ」
「「「・・・!」」」
その上で続けたルークだが、インゴベルトすら下に見ていたのではと言ったことに流石に聞いていた三人も息を呑む。そう言った時、痛そうに顔が歪んでいた為に。
「・・・一応俺にとってあいつは数少ない幼馴染みだ、失いたくはない。けどそんなあいつを信じることなんて出来なくなってる・・・ジェイド達の言ったこともあるけどあいつがやった行動は自覚なんて無いんだろうけど人を見下したもんだから・・・俺は自分の意志で、ナタリアとの婚約を解消することを選ぶ。多分あいつと結婚したら無茶苦茶になる、それこそジェイドの言っていたようになると思うから・・・俺は、そうする」
「・・・ルークさん・・・」
そして自身の中にある情を吐露しながらも最善の選択の為に暗く顔を落とし婚約解消をすると自ら宣言したルークに、セカンも辛そうに顔を歪める。
「よろしいのですか、ルーク殿?確かにカーティス大佐よりの手紙でそうしなければならないとは書かれてましたが、自らそのようにおっしゃるとは・・・」
「・・・フリングス少将、多分ここで俺がナタリアに情けをかけてそれで済ませたら色々後悔することは目に見えてる。だからこれは俺が、俺自身がナタリアに言わなきゃいけないことなんだ。『ルーク・フォン・ファブレ』として、ナタリアを王女から引きずり下ろす宣告は・・・」
「・・・そうですか・・・」
そこに今度はフリングスが心配そうに声をかけるが、悲痛ながらも不退転の覚悟を示すルークにそれ以上何も言えなかった。
「・・・よろしいですか?・・・恐らく数日の内にジェイド達はナタリア殿下を連れてこのベルケンドに来るでしょう。その時が来るまでルーク殿はゆっくり休まれてください、時間はまだありますので・・・ごゆっくりと」
「・・・あぁ、あんがとな。ディスト」
更に続いてディストが慎重に声をかけてくるが、気を使った表現を分かりやすくも遠回しに向けてきた事にルークは力なくも笑んで礼で返す。
「ではフリングス少将はルーク殿についていてください、スピノザの所に行きますのでセカンは私に」
「はい、わかってます・・・では」
話もついた所で禁書を解析させているスピノザの所に行くとディストが言ったことで、名指しされたセカンは部屋を出んと先を行き出すその姿を二人に一礼してから後を追う。



・・・何故セカンがディストに付くのかと言えば一応ディストは敵だった身で、逃げる可能性も無いわけではない。そう考えたフリングス少将がスピノザの所にいる時は自身かセカンが交代で見張りをする事を決めたのだ。そしてもう1人はルークを護衛する、という訳である。どんな危険があるかわからない、そんな考えがある故に。









・・・ジェイドから手紙が届いてそんなやり取りがあった後、ベルケンドでそれぞれの過ごし方をしてきたルーク達。そして数日経ち、その時が訪れた・・・










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