時代と焔の守り手は龍の剣 第十七話

・・・バチカルにて策略と暴力によって比古清十郎達がインゴベルト達を落とし終え、比古清十郎達はナタリアを連れ秘密裏に一路ベルケンドへと向かう。












・・・その一方でベルケンドに先に向かったルーク達は、ジェイドより送られた手紙を前に四人共に固まっていた。



「・・・ナタリアが、偽者・・・」
「・・・えー、1つ言っておきますが、それは間違いなく本当の情報ですよ。私もとある確かな情報筋からそう聞いているので、嘘ではないとは保証します」
・・・ベルケンドの宿の一室にて、手紙を手に信じられないと目を剥いているルークにディストが自身も知っていたと慎重に嘘ではないと強調する。
「ですがそれを大詠師が戦争に繋げようと利用するとは・・・どれだけ預言を実行するのに躊躇いがないか、改めて思い知らされると同時にマルクトが危険に晒されていたかを痛感しますね・・・」
「それがダアト、というよりは預言を実行することだけを狙う者達の思想の危険性です」
その中でフリングスがモースの行動に複雑そうに顔をしかめ、セカンがだからこそ危ないのだと毅然として突き付ける。
「・・・とは言うものの、ナタリア殿下の行動は預言を抜きにしてもあまり誉められた物でないのも事実かと思いますが・・・」
「・・・マルクトの臣民としてでなく一個人として率直な感想を述べるなら、私もそう思います。この手紙の中身に氏より育ちと言うような考えを持たれず、地位にこだわられているとありますし、何より前より聞いていましたバチカルから許可なしで親善大使一行に付いていったという件・・・このような事をもし同じような状況でピオニー陛下がやられたとしたなら間違いなく皇帝としての責任を問われ、罷免とまでいかずともそれに近い程の罰が求められるでしょう。しかし書面上では殿下は反省する素振り、というよりは罰があるとすらも考えていなかったとか・・・王位継承権を持つ身として、どうかと思います。私は」
しかし一転してナタリアの話題で表情を複雑そうに歪めるセカンに、フリングスですらもが一個人でという前置きを置いてその行動を批判する声を丁寧ながらも言いにくそうに上げる。
「・・・」
「・・・やっぱり複雑ですか、ナタリア殿下の事が?」
そんな中1人複雑そうに手紙を見ながら沈黙していたルークにセカンが気遣う言葉を向ける。
「・・・無いって言ったら嘘になる。けどなんつーかその、納得している俺もいるんだ」
「・・・納得?」
しかし前を向いて自身の偽らざる思いを口にしたルークにセカンは首を傾げた、処分に全面的に反対でないことに。
「・・・まぁその、ジェイドから聞いてるとは思うんだけどナタリアが俺達と一緒に行くことを決めた時さ・・・俺反対したんだよ。つってもその時の俺はヴァン師匠との約束の事をバラすって言われて、黙るのを条件に連れていかざるを得なかったんだけどな」
「・・・聞きました」
そこから独白に近いルークの言葉に、セカンはジェイドにその時の事を告白していた中身をジェイドから間接的に聞いていたのがあり知っていると言う。
「・・・一応俺だってあんまり誉められたもんじゃないっつったって、王族として育てられてきたんだ。行きたいっつー気持ちだけだったなら別に良かった、そう言うだけなら自由なんだから。けど止めろって言われたのに勝手に俺達の前に来た時、ウゼェとも思ったんだけど今になって感じたんだけどさ・・・なんで叔父上の言うことに逆らうんだよってな」
「・・・」
そして続く独白調の語りに、王族としての自覚が少なからずあるからこそとの声があったことにセカン達は何も言わずに聞き入る。



・・・ルークは何だかんだ自分がファブレ邸に閉じ込められていたことに不満こそもたらしていたが、それでも王族として育てられたと自覚はしていた。それはルークが刷り込み同然のように王族として育てられ上に歯向かうことが意味がないと普段の生活から理解していた為であるが、だからこそ上の命令と言った物には良くも悪くも従順であった。

そんなある意味で純粋培養に育てられたルークにとって、今となってはインゴベルトの意志にことごとく背くナタリアの姿はおかしいと言える物だった。










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