時代と焔の守り手は龍の剣 第三話

(大方この展開は師匠が予想してた通り・・・そしてルークさんが和平の材料の為にキムラスカに送り届けられるなら、おそらくその後に私達も本格的に動く事になる。和平の話題に上がるだろう、アクゼリュスを中心として・・・)
・・・和平の目的はアクゼリュス絡み、その上で近い内に自分と比古清十郎も動くだろう。そうあたりをつけるセカンの目に、イオンに気付かれない程度に強い決意が灯る。



「まぁそういう訳ですので、お二人に顔を見せに行ってはいかがですか?お二人は隣の部屋でくつろいでいると思われますので、ブリッジとか重要な場所に行かない程度でしたら行動は自由にしていいとのことですから」
「はい。そうします」
そんなセカンを気遣いイオンは声をかけ、セカンは素直にそれに応じる。が、セカンはイオンの後ろに途端に視線を向ける。
「・・・そういえば、導師守護役の子は?」
「あ、アニスでしたらルーク達と一緒にいますよ。よかったら彼女とも仲良く話してください、僕は少し風に当たって来ますので。では失礼します」
エンゲーブでもだったが、導師の護衛であるはずの導師守護役が何故常に導師についていないのか?・・・ふと姿が見えないアニスとやらを気にしたセカンの疑問にイオンは何事もないように答え、軽く頭を下げて室内から退出する。
「・・・ありえない」
そのイオンが消えた扉を見ながらセカンは決意を灯した瞳を一瞬にして霧散してしまわせ、ただ失望したような瞳になって首を横に振る。



・・・護衛というのは場を問わず護衛対象を守るための存在である。そして護衛というのは位の高い人間くらいにしか常に側につけることを許されない一種のステータスでもある。

そんな護衛をつけるような立場にいる人間はその立場故、危険に総じて会いやすい。それは導師というローレライ教団のトップにいるイオンなら普通の人より断然わかっている・・・とセカンは思っていた。

だが現実はエンゲーブ、そしてこのタルタロスでイオンは導師守護役という護衛を外させ行動していた。それがどれだけ不用意な行動なのかと、考えた様子も見せず。



「自分は死なない、とでも考えてるのかな・・・それともここは味方しかいないから大丈夫だと・・・多分導師の性格を考えると味方しかいないって思ってると思う。それがどれだけ危険なのかもわからないまま・・・はぁ」
そしてセカンは失望の目のまま、頭を抱える。



・・・セカンは比古清十郎と小屋で暮らしている時、小屋にいきなり野盗が押し入って来るような事態も度々経験してきた。無論二人の腕に敵うような野盗などいる訳もなく全部撃退はしてきたが、セカンはそんな生活をしている内に感じていた。‘絶対安全と言える場所などない’と。

一度外に出れば魔物もだが、人でさえも襲い掛かるこの時勢。家や村という集落にさえ野盗が来るような事さえあるのに、何の備えも無しに外に出るそのイオンの神経・・・セカンはその神経を非常に疑った。

エンゲーブに関しては確かに平和であると言えるが、導師に良からぬ事を企む輩がいないと確約されてなどない。同様にマルクト軍の動かすタルタロスも今は普通に航行しているが、一つきっかけさえあれば一転して修羅場に成りかねない。例えばタルタロスにいるマルクト軍に匹敵する軍の襲撃を受けるとか、マルクト軍の唐突な裏切りだとか・・・

・・・陰謀が常に渦巻いてるというのは考えたくないものだろうが、イオンには大詠師モースという派閥の違う敵がいることをセカンは知っている。そのモースという人物がどれだけ手段を選ばないかも。

そんな人物に狙われてるやもしれない、それでなくとも周りは一歩間違えれば危険ばかり・・・その状況で自らの命を守ってくれる護衛の存在を、自分の気持ちで場から外させる・・・その導師としてあまりの不用心さに、セカンは失望を感じざるを得なかった。自分の身を大事にしない、自分の周りにある現状をあまりにも盲目過ぎる導師の行動の有様に・・・








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