時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「では夜ももう遅い事ですし、ナタリア殿下は私室に戻られて明日に備え休まれてください・・・我々は新たに部屋が用意されるまで、こちらで待機させていただきますので」
「あっ・・・そうでしたわね、貴殿方の部屋には兵士の方々かいらっしゃるのでした・・・わかりました、ではまた明日に」
「はい、また明日・・・さて」
「・・・っ?」
インゴベルトから向き直りジェイドは優しくナタリアに休むよう勧めれば、話の流れで思い出したこともありナタリアは特に疑いを持たず軽く頭を下げ退出していく。それを見届け改めてインゴベルトに向き直るジェイドに、インゴベルトの顔が怪訝な物へと変わる。そこにあったのはジェイドの非常に真剣な顔であった。
「このような言い方は多少卑怯に思えるかもしれませんが、インゴベルト陛下には先に言っておくべきかと思われますので言わせていただきます」
「・・・何をだ?」
明らかにこれが本題だと言わんばかりの雰囲気が滲んでいる。その空気を察したインゴベルトも先を緊迫しながら促す。



「結論を言わせていただきますが、ナタリア殿下にはルーク殿との婚約を継続させる気はごさいません。ですのでその事を承知でインゴベルト陛下に以後進めていただきたい」



「何・・・っ!?」
・・・そして出てきた本題とおぼしき物はナタリアには実質選択権を与えない、というもの。
真剣な眼差しで向けられた物に、インゴベルトの表情が驚愕で固まる。
「何故、そのようなことを・・・!?」
「失礼ながら、ナタリア殿下にこれ以上は任せられないと思ったが故です。このまま王女殿下としていていただくには力不足というよりは、認識不足の点が大きいと思ったが故に」
「・・・それは、確かに頷けん事はない。事実ナタリアはそれで私にも反抗心を隠さず、行動に移してきたが・・・そなたたちに何の関係がある?ナタリアをルークの相手から排斥する事が」
たまらず訳を聞くが育てた側として耳が痛い事実を聞かされそれを認めつつも、その事自体はマルクトには関係無い事だろうと冷静になって返す。
「・・・すみませんが、その理由については詳しくお話出来ません。強いて言葉を選ばず言うならナタリア殿下をこれ以上表舞台に任せたくはないから、というのが理由の1つにあります。殿下が女王となられれば我々は前歴があるため、あまり殿下を手放しには歓迎出来ませんので」
「・・・ますます耳が痛いな・・・」
しかしそれでも優位に立っているのはジェイドであり、ナタリアの微妙な立ち位置は多少無礼があっても許される物がある。話の流れに沿いつつも核心を見せないジェイドの語りに、インゴベルトも引っ掛かり頭を抱える。
「・・・だがいずれナタリアには罰を与えねばならん時が来る。そう思えばナタリアを次期女王の座から外すのは、ナタリアにとって相当にキツい罰になり得る上に周りにも示しがつくだろうな・・・」
しかしそこで怪我の功名と罰に対しての良案を思いつき、インゴベルトはブツブツと呟く。
(意外と前向きにナタリアへの罰の事を考えていますね。とは言え無意識に娘を守るように考えているようですが、そうは行きませんよ)
そんな様子からジェイドは徹底的にナタリアを罰しきれない甘さも残っている事を確認しつつ、更に押し込むように口を開く。










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