時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「っ!?」
・・・その瞬間、ナタリアの顔がジェイドを信じられない物を見る物へと変わった。
「・・・ルークにナタリアとの婚約を見直させろ、と?そなた、何故そのようなことを言い出す?」
「我々はシンク殿達の話を聞きはしましたが、流石にルーク殿にこの事は確証がない限りは言えないと思いまして伝えてはいません。とは言えこうやって真実が明らかになった以上、我々はルーク殿にこの事を伝えようと思っています。そうなればルーク殿も色々とお考えになられると思います」
「成程・・・確かにルークもそれを知れば複雑な想いを抱くであろうが、同時に・・・キムラスカの王族の血を引き、次代の王になれるのは歳の事から考えルーク以外にはいない。そう考えるならルークにはナタリアの事を伝えた上で、どうするべきかを考えてもらうべきだろうな・・・」
「待ってください、お父様!」
「・・・なんだ、ナタリア?」
そんなジェイドの言葉にインゴベルトは懐疑的な視線を向けるが、その視線に対してルークに事実を明かすと交えての現実的な返答にルークを犠牲にしていたことなどどこへやらと納得するが、ナタリアは焦った様子で待ったをかける。
「そんなこと、言わないでくださいまし!私がルークと結婚しないと言うのであれば、私はどうなると言うのですか!?」
「・・・難しい所だとしか言えんな、そもそもそなたが引き起こした事態から事実が明るみに出たのだから。だが1つ確実に言えるのはそのルークの判断に左右される形で、そなたの処遇を私は決めようと考えている」
「!そんな・・・」
すぐさま自身の処遇を問う声を大きく向けるナタリアに、インゴベルトはある意味では最も責任転嫁とも取れるルークの意志に任せるとの答えを返しその衝撃で体をフラフラと後退させる。
「ふむ・・・ならば我々と共にグランコクマに参りますか?」
「えっ・・・?」
そんな姿を見たジェイドからの提案に、ナタリアの足が止まり青い顔で振り向く。
「このまま我々の話を受けたルーク殿からの答えを聞いた所で、殿下はすんなりとその事実を受け入れられるとは見受けられないように殿下の様子から感じました」
「そ、それは確かにそうですが・・・」
「ですからそれならと、私は提案しているのです。ルーク殿と直接話し合い、ナタリア殿下が気の済むようにしていただけたらどうかと思ったのですが・・・いかがですか?」
「・・・行きますわ!私の事をお話しすれば、ルークも私の事をわかってくれます!」
そんな状態に良心的に思えるようなチャンスを与える提案をしたジェイドに、ナタリアは最初こそ戸惑っていたものの自身の立場を回復させる機会だと最後には自信を覗かせる真面目な表情になり力強く頷いた。
「と言うわけです陛下」
「・・・?」
その様子にジェイドはナタリアの前に出るようにしてインゴベルトに歩み寄るが、その時視線の先が後ろにいるナタリアを指すように向けられていたことにインゴベルトは眉を寄せる。だがその顔を位置関係上見れないナタリアは別段変わることはない。
「このバチカルに戻って来たばかりですみませんが、またナタリア殿下をお連れすることになりました。つきましてはこのグランコクマ行きに関しての事後処理を陛下にお任せしてよろしいでしょうか?」
「・・・うむ、そういう事ならいいだろう。どちらにせよ我々には拒否権はないのだからな、そのくらいなら構わん」
そのままに後始末を頼むジェイドに意図を掴めずもインゴベルトはすぐさま頷く・・・が、その意図にインゴベルトはすぐに気付かされる事になった。









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