時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「とは言え、陛下が実際にどのような処置を下すかは我々にはわかりません・・・が、今陛下が預言の事実を明かした事から察するに少なからず殿下の立場は悪くなるでしょうね。その事実をバラされたなら殿下は王女としていられなくなるほどの事態になりますから、多少同情は買えども結局退位を命じられることでしょう。王女としてあるまじき行動を取り続けたツケは安くありませんからね。こう言ってはなんですが既に貴女の王女という地位は少なくとも形骸化する事は避けられないでしょう。インゴベルト陛下の意に沿わない反抗をすればその時点で貴女の地位は無くなると見ていい・・・」
「・・・っ!」
そこに更に傷口に塩を塗り込むよう、並の処分では済まないとほのめかすジェイドにナタリアの体が再び揺れる。
「・・・わ、私は、そ、そんな・・・そ、そのようなことは、嫌・・・」
「・・・嫌、ですか?それは何がですか?」
「えっ・・・っ!?」
そこからか細く否定を望む声をナタリアは小さく紡ぐが、ジェイドはその声を拾い上げ何に対してかと問い掛ける。顔を上げたナタリアだが、ジェイドの探るような深い視線にたまらず呑まれて身を引いた。
「・・・そ、それは・・・こ、このまま、王女でなくなる、のが・・・」
「・・・成程、そうですか・・・よくわかりました、殿下と言うものを」
「・・・えっ・・・?」
その呑まれたままにどうにか答えを返したナタリアだったが、その瞬間ジェイドは探る視線を失望のこもった瞳へと変え険しい目付きになっている比古清十郎に顔を向け意味深に頷いた。だがその行動の意味を理解出来ないナタリアはただ呆けた声を上げるばかり。
「・・・さて陛下、改めて問います。マルクトとの戦争をまだお望みでしょうか?」
「・・・うっ・・・」
だがそれも一瞬で終わりまたジェイドはインゴベルトに話を振るが、当の本人はダラダラ汗を浮かべていた。
「・・・ここまでお膳立てされてしまえば、今更キムラスカが有利な条件で戦争を始められるような事は到底ないであろう。下手を打てばマルクトにではなく、ダアトとの戦争になり得るやもと言われれば尚更だ・・・認めざるを得んだろう、もう我々は戦争を出来るような状態ではない。従ってもう、戦争をする気は私にはない」
「ほう・・・それは真の言葉と受け取ってよろしいのでしょうか?」
「・・・まだモースがいたならどのような手段を使ってでも戦争に持っていこうとしたのだろうが、これ以上は無駄だと私は思った。故に誓おう、キムラスカは戦争には興じる気はないと」
だがようやく諦めがついたのか伏し目がちに打つ手なしと実質の降参宣言に、ジェイドは軽く頷くと更に口を開く。
「では陛下、その言葉を確かな物と証明していただくため今より私が申し上げる事を聞き入れてはいただけないでしょうか?無論、そのような不躾な願いをするにあたりその対価に見合うだけの対価はお支払致します」
「・・・なんだ、その対価とは?」
「キムラスカが戦争に踏み切ってこない限りは殿下の事実をけしてマルクトは話さない、という物です」
「!?そなたは、キムラスカを脅迫しようというのか・・・!?」
その中身とは明らかに脅しに取れるような物言い。インゴベルトは瞬時にその事に気付き焦りに顔を強張らせるが、ジェイドは至って冷静に勤める。
「まずは話を聞くだけは聞いていただけないでしょうか?それが脅迫に感じるかどうかは陛下次第ですが、出来る限りは無理のない願いとなっています」
「・・・いいだろう、言ってみよ」
そこで不利はないとも取れるジェイドの言い方に、インゴベルトも立場が弱いだけに無下に出来ず話すことを許可をする。










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