時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「・・・カーティス大佐・・・」
「・・・はい、なんでしょうか?」
と、インゴベルトを追い詰めたのも束の間、今度はうつむくナタリアから小さくも確かに聞こえた声にジェイドはそちらに向く。
「私は、一体どうなるのでしょうか・・・?」
「どうなるとは、一体何がですか?」
「・・・貴殿方にお父様のお話を聞きましたら、私は本当にお父様の子ではないのでしょう・・・ですがそれでその後、私はどういったように扱われるのでしょうか・・・?」
「成程、ご自身がどうなるかわからないというのが不安である・・・と言いたいのですね」
「はい・・・」
うつむくその姿勢から顔を上げず、ただプルプル震えている様子からいやが上にでも自分に降りかかるかもしれない凶事を予感したのだろう。その姿にジェイドも精一杯頭を働かせた上でギリギリの所で理解はしているのだと、納得しつつも口を開く・・・ナタリアにとって不利な材料を。
「どうでしょうね。仮にこちらがいかに殿下を擁護しようにも、殿下はインゴベルト陛下の意に沿わない行動を取りました。その行動で貴女はキムラスカの断罪を受けなければいけない立場にあります、そのことに関しては我々は貴女を擁護する訳にはいきません。そうしてしまえば我々に陛下はよくても、事情を知らない貴族達には間違いなく反感を買うでしょうからね・・・何故なら未だ殿下には勝手にバチカルから抜け出した罰が与えられていないのですから」
「っ!」



・・・ジェイドからしてみればナタリアを擁護する気も、都合よく罪を看過させてやる気もない。重要なのはナタリアを見極められるかどうか、である。



そもそものバチカルから抜け出した罪の件を持ち出され憔悴した様子でバッと顔を上げるナタリアに、ジェイドは更に続ける。
「尚、参考程度に言っておきますが殿下が起こした行動は少し気分転換にサボタージュするくらいの軽い物とは到底言えませんよ?バチカルを出て殿下は当される公務を相当の期間放り出しました、それはサボタージュとは到底言えない物です。そんな事態を引き起こしたなら並の貴族でしたら良くて地位が下がるくらいで、最悪は貴族としての地位財産全てを没収された上で処刑も有り得ます」
「なっ!?そ、そんな・・・」
「貴族にとって公務とは民から税金をもらい受ける代わりにより良い政治で民を導き、民に払っていただいた税金以上の恩恵を与える為の大事な仕事です。それを全く考えず私利私欲の為に公務を放り出すなど貴族として、ましてや王族としてはあるまじき行為です。貴女はそれらを全く考えずただ自分の考えだけでケセドニアに辿り着いた時にバチカルに帰ろうと思い至る事もなく、我々が訪ねるまで動こうとしなかった・・・それがどれだけ民からの信頼を裏切る行為であるか、という事を王族として育てられた貴女が気付かなかったのは残念です」
「・・・っ!」



・・・言葉こそ尊大に畏まって言ってはいるが、ジェイドの言っているのはこうだ。‘民からお金もらって仕事するのにワガママでサボるなんて王女失格だろう’、である。だが実際に全く仕事をしない人間を罰しないなど、貴族でなくとも有り得ない話だ。



そんなジェイドに既に反抗の意気を折られているナタリアは正論でもあるだけに反論など出来ず、また目を見開きうつむく。











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