時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「さて・・・ナタリア殿下。貴女はどのようにお思いですか?」
「えっ・・・?」
「陛下はこの通り預言通りに進めようとされていますが、我々は和平を成功させたいと思っております。その点でキムラスカの王女殿下である貴女は本来なら陛下の意に沿い動くのが臣下としての正しい姿です。それでも殿下は和平に賛成されますか?」
「愚問ですわ!戦争など起きない方がいいに決まっております!」
試金石となりうる機会の質問は和平に賛同か否か。ジェイドからの慎重な問いかけにナタリアはジェイドの方を向き即座に和平だと言ってのける。
「・・・だ、そうです。陛下、和平の条件は既にクリアされております。そして殿下もこのようにおっしゃっています。どうでしょうか、ここは預言により全てを滅ぼした後で一国だけ残って人々が疲弊して得られる平和より、二国で何も失わず穏やかに進められる平和への道を選びませんか?」
「・・・それは本心で言っておるのだな?」
「えぇ、ピオニー陛下の名に誓い」
ナタリアの意志も聞けたことで今度はインゴベルトに他意のない言葉だと、疑うその視線にジェイドは言ってのける。
「・・・確かにそなたの言うことには頷ける物がある、預言に詠まれているとは言え戦争をすれば人々は疲れる。ましてやキムラスカかマルクトが滅びる程となれば、世界中に降りかかる影響ははかり知れんだろうな」
「お父様、なら・・・」
「だが、それでもその発案は受け入れる訳にはいかんな」
「なっ・・・!?」
そのジェイドにインゴベルトは少し納得の様子を見せ出したことにナタリアが喜色を浮かべかけたが、反語ではっきりとその意志を否定したことで愕然とした表情になった。
「お、お父様!平和への道はすぐそこにあるのです!それを預言だからと拒否するなど・・・!」
「・・・今更後戻りなど出来んのだ、ナタリア。それにそもそもそなたはわしの意向を否定した身。なのに何故それを理解せずにいれるのだ?」
「え・・・?」
「お忘れでしたか、殿下?そもそも貴女はアクゼリュスに向かうなと言われた身で、アクゼリュスの事は預言に詠まれていました。預言だからとアクゼリュスに陛下の意向を無視し向かった貴女にそれを言われたくないと、陛下はおっしゃってるんですよ」
「っ!」
すぐさまにインゴベルトを批判する声をぶつけるが、かつての行動を指摘され呆然とするナタリアにジェイドがその言葉に補足をしその失態をハッと思い出させる。



・・・そう、預言に詠まれているからという要因があってそれを成し遂げる為にアクゼリュスに向かったのはナタリアだ。その事実を忘れて都合が悪くなったら預言を悪く言うのは流石にお門違いであると、ジェイドからも言えた。



「ただ気になったのですが・・・陛下の今言われた事を統合するなら陛下はアクゼリュスに殿下が向かうことを黙認していた、ということになりますが・・・いかがですか?」
「っ!?」
「・・・その通りだ」
「っ!?」
だがそこで新たに推測出来る材料が出てきた事に、ジェイドは確認する。ナタリアは見捨てることにしたのかと。驚きジェイドを信じられないと見るナタリアだったが、インゴベルトが肯定したことに更に驚愕してインゴベルトに振り向いた。






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