時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「何故、何故そのようなことを・・・!?」
「何故、か・・・だからそなたにはわしは何も言わなかったのだ」
「え・・・?」
「・・・そこから先は私が言います。端的に言えば陛下はマルクトとの戦争をお望みだったのですよ」
「なっ・・・!?」
「そうですね、陛下?」
「・・・そうだ」
「・・・っ!?」
インゴベルトの服を持ち信じられないと体を揺するナタリアだが、インゴベルトはあいにく動揺せず静かに諦めたように言葉を紡ぐ。ナタリアは呆然とするがジェイドとインゴベルトの会話に両者の真意を測れず、二者を交互に目を揺らしながら見る。
「ど、どういうことなのですかこれは一体・・・!?」
「まぁこれも詳しい事は省きますが、要はアクゼリュス出立の際に詠まれたあの預言には実は続きがあったんですよ。キムラスカとマルクトの間で戦争が起こると詠まれた預言がね」
「!う、嘘ですわ!そんなこと!」
「嘘ではありません。本来でしたらそのアクゼリュス行きでキムラスカとマルクトの戦争が始まるというのが預言に詠まれた中身なのですが、アクゼリュス救援がトラブルもなく無事になりましたのでね。陛下はそんな状況を望んでいないからこそ我々を殺してまで戦争に持っていこうとしたのです」
「そ、そんな・・・嘘ですわよね、お父様・・・!?」
「・・・事実だ、嘘などではない」
「!?」
そんなナタリアにジェイドは一切の嘘偽りのない・・・まぁある狙いで抜かした部分こそあるが、事実は事実。それを聞かせはするが一切ジェイドの言葉を理解したくないと言わんばかりのナタリアがインゴベルトに顔を向けるが、一切抵抗の様子も見せず肯定するインゴベルトに愕然とし後退する。
「・・・私からも質問をしよう、死霊使い。ナタリアをこの場に連れてきたのは預言の事を聞かせる為か?」
「えぇ、そうです」
ナタリアが自身の前から離れた事で今度はインゴベルトがジェイドに探るよう、言葉を向けてくる。
「ケセドニアに黙って付いてこられた事から、ナタリア殿下はこの事はお知りではないだろうと予測がつきましたのでね。とは言え私の口からだけでそんな重要な事を申し上げましてもナタリア殿下は信じてはいただけないでしょうから、陛下からもお話していただければ信じていただけると思いこちらに来ていただいたのです」
「・・・ならばもう1つ聞こう、あくまでもマルクトの望みは和平・・・という事になるのか?」
「えぇ、そうです。こちらとしては戦争になるなら簡単に負けて差し上げる気はありませんが、元々は和平の為にこのバチカルに来たのですからね。それに今更預言通りの戦争など起こせるような状況ではありませんし、起こさせるつもりもございません。そして今なら我々に差し向けた刺客の事も私の中だけで納めるつもりでいます」
「・・・つまりはそれだけ戦争を回避したい、ということか」
「はい」
その視線を受けながらもジェイドはあくまでも真摯でいて不敵、そして和平の為に敢えて戦争になりかねない事態を今なら飲み込む気でいるという覚悟を持って返す。



(そろそろいいでしょうかね。さて・・・見極めますか、ナタリア殿下という存在をどう捉えているかをね)
・・・流れは作った、その上でナタリアという存在がどういう物になり得るかを見極める。そう決めたジェイドは核心を突くべく、口を開く。







17/30ページ
スキ